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看護部長会・診療科部長会でプレゼンする際の注意点

2025/11/25

看護部長会・診療科部長会でプレゼンする際の注意点

ヘルスケア本部の主任として、睡眠検査事業を大学病院へ提案する役割を担っています。スタートアップで人も少なく、医療の商習慣も手探りから始めました。特に緊張するのが、看護部長会や診療科部長会でのプレゼンです。1回の印象がその後の院内調整に大きく響くからです。ここでは、私が失敗しながら学んだ「伝え方」「資料」「進め方」をまとめます。2024〜2025年のトレンド(医療DX・生成AI、病院再編、働き方改革、ガバナンス強化)を踏まえた内容です。

1. プレゼン前に必ず確認すること

  • 議題登録と目的:議題に正式登録されているか、プレゼンの目的(情報共有/意見聴取/承認)が明確か。目的が「承認」なのに準備が共有レベルだと印象が悪くなります。
  • 持ち時間と質問時間:持ち時間と質疑時間の配分を事務局に確認します。質問が長引く場合にどう区切るか、事前に合意しておくと安心です。
  • 資料配布のルール:紙配布か電子か、事前送付か当日か、回収の有無。事前送付が可能なら48時間前に送ると、質問が具体的になります。
  • 出席者の構成:部長クラスだけか、中堅スタッフも同席するか。中堅がいる場合、運用の具体を一段深く用意すると好印象です。
  • 関連会議のスケジュール:倫理委員会や情報セキュリティ委員会の開催日を確認し、プレゼンの後工程をイメージしておきます。

2. 冒頭で押さえる3点

  1. 課題の共有:看護部と診療科が日々感じている課題を、先に言語化します。「夜勤帯の記録負荷」「申し送り時間」「患者説明の時間」「インシデント報告の手間」など。
  2. 目的と範囲:今回は何を決める場か(例:PoC実施の合意、評価指標の確認、倫理・情報審査の要件整理)。
  3. 安全性と責任分界の先出し:データフロー、ログ、モデル更新、障害時の代替フロー、責任分界を簡潔に示します。これを先に出すと、その後の質問が建設的になります。

3. 資料構成の基本

  1. 現状の課題と影響:時間外、インシデント、申し送りのばらつき、患者説明時間などを数字で示します。
  2. 提案の概要と運用フロー:誰がいつ、どこで、どう使うか。夜勤・休日・新人教育も含めたフローを図示します。
  3. 安全性・情報ガバナンス:データ経路、暗号化、ログ、アクセス権、モデル更新、責任分界。
  4. 教育とサポート:初期教育、夜勤向け再教育、問い合わせ窓口、リリース管理。
  5. 効果試算とKPI:時間削減→人件費換算、回収期間、インシデント減、患者体験。働き方改革KPI(時間外削減)との紐付け。
  6. PoC計画と撤退条件:目的、期間、評価指標、費用負担、データ範囲、撤退条件。
  7. スケジュール:今日の承認→倫理・情報審査→PoC→稟議→本番の見通し。
  8. 横展開プラン:関連病院や他病棟への展開イメージを1枚で。

4. 看護部長会で特に重視されるポイント

  • 教育工数:誰が教えるか、何分かかるか、夜勤・週末・新人のフォローまで含めて具体化します。
  • 手順のシンプルさ:手順が1つ増えるだけで夜勤帯は回らなくなることがあります。操作ステップを最小化し、代替手順も用意します。
  • 問い合わせ動線:どこに連絡すればよいか、何分で返答するか。一次対応と二次対応の分担を明確にします。
  • 記録と監査:ログの保持期間と閲覧権限、監査のやり方を提示します。
  • 働き方への寄与:時間外削減を具体的な数字で示し、心理的ストレス(説明責任、転記ミス不安)が減ることを伝えます。

5. 診療科部長会で特に重視されるポイント

  • 臨床への影響:臨床成績、安全性、ガイドライン整合性。責任の所在を明確にします。
  • 患者への影響:待ち時間、説明時間、体験の変化。
  • データの扱い:学術利用の可否、匿名加工、持ち出し禁止設定、モデル更新の審査。
  • 回収期間とKPI:在院日数や再入院率、時間外削減が経営にどう効くか。
  • 他診療科との調整:横断的に影響する場合の優先順位とスケジュール。

6. 2024〜2025年のトレンドを踏まえた伝え方

  • 医療DX・生成AI:ハルシネーション対策と監査ログ、根拠提示UIを先に見せます。情報部が不安を口にする前に資料で潰します。
  • 病院再編と中期計画:重点診療科に合う効果を明示し、「今年やる理由」を中期計画に沿って説明します。
  • 働き方改革:時間外削減を週・月・年で数字化し、看護部と診療科の双方に刺さる表現にします。
  • コスト圧力:保守・教育・運用負荷まで含めたTCOを提示し、セルフメンテとリモートサポートで保守費を抑える案を出します。
  • 透明性とガバナンス:反社・利益相反、内部統制、改訂履歴の管理方法を明記します。

7. よく起きる失敗と対処

  • 資料後出しで審査サイクルを逃す:初回でデータフロー・ログ・責任分界・PoC計画を渡せるよう、テンプレを常備します。審査日を必ず確認します。
  • 教育工数を軽視して反発される:夜勤帯の業務を見学し、教育計画を一緒に作ると態度が変わります。
  • 質問時間が足りない:事務局と事前に質疑の進め方を決め、時間が足りない場合の「持ち帰り項目」を整理してから終えます。
  • 価格競争に巻き込まれる:稟議資料に運用価値(時間外削減、教育工数削減、TCO低減)を入れ、回収期間を示します。価格だけでなく「働き方への寄与」で判断してもらいます。

8. プレゼン当日の進め方(タイムライン例:15分)

  1. 0:00〜1:30 自己紹介と目的、議題確認
  2. 1:30〜4:00 課題と提案概要(運用フロー含む)
  3. 4:00〜6:00 安全性・情報ガバナンス(データフロー、ログ、責任分界)
  4. 6:00〜8:00 教育・サポート体制(問い合わせ動線、夜勤・新人対応)
  5. 8:00〜9:30 効果試算とKPI(時間外、患者体験、TCO)
  6. 9:30〜11:00 PoC計画と撤退条件、スケジュール
  7. 11:00〜14:30 質疑応答(時間配分を事務局と共有)
  8. 14:30〜15:00 次のアクション確認(必要資料、担当、日程)

9. トークスクリプト例

  • 冒頭:「本日は、夜勤帯の記録と申し送りの負担を減らし、インシデント報告の精度を上げるためのご提案です。今日の目的は、PoCの合意と評価指標のご確認です。」
  • 安全性・情報:「データは院内閉域で完結し、ログは10年保存、閲覧権限は3段階で設定しています。モデル更新は四半期ごとに審査を経て実施し、ロールバック手順も用意しています。」
  • 教育・サポート:「初回教育は1時間、夜勤向けに15分の再教育、新人オンボーディングの資料もご用意しています。問い合わせ窓口は平日+オンコールで対応します。」
  • 効果:「夜勤帯の入力を週あたり平均○時間削減できる見込みです。時間外削減を人件費に換算すると○万円/年です。回収期間は○か月で試算しています。」
  • 締め:「本日ご相談したいのは、PoCの評価指標と、倫理・情報審査に必要な資料の確認です。次回、合同デモの日程をご相談させてください。」

10. チェックリスト(抜粋10)

  1. 議題登録と目的(共有/意見聴取/承認)が明確か。
  2. 持ち時間・質疑時間と進行方法を事務局と合意したか。
  3. データフロー・ログ・責任分界・PoC計画を初回で配布できるか。
  4. 教育計画(夜勤・新人含む)と問い合わせ窓口を明示したか。
  5. 時間外削減を数字で示し、回収期間を出したか。
  6. 中期計画と重点診療科への貢献を示したか。
  7. 反社・利益相反、内部統制への対応を明記したか。
  8. 横展開プラン(他病棟・他病院)を1枚で示したか。
  9. 質疑が足りない場合の「持ち帰り項目」を整理したか。
  10. 次のアクション(担当、日程、必要資料)を確認したか。
    ※実際は50項目で運用しています。

11. 30・60・90日プラン(プレゼン後の動き)

0〜30日

・看護部長会/診療科部長会での質疑を整理し、不足資料を1週間で提出。
・倫理・情報セキュリティ審査の要件を確定。
・PoC計画をブラッシュアップし、評価指標と撤退条件を確定。
・教育・サポート体制(問い合わせ窓口、リリース管理)を文章化。

31〜60日

・PoC開始。週次で看護部・情報部と短時間の状況共有。
・生成AIで議事録要約を回し、合意事項と宿題を即日共有。
・中期計画の重点診療科に紐づく効果を途中報告でアピール。

61〜90日

・PoC結果を稟議セットに格納。時間外削減、TCO、患者体験、安全性を数字とストーリーで提示。
・L1/L2サポートと教育・再教育、リリース管理、障害時フローを明文化。
・他病棟・他病院への横展開プランを提示し、追加予算を確保。

12. 日々のルーティン

・初回訪問の帰りに「聞けなかったこと」を3つメモし、翌日までに回収。
・週末に失注レポートと質疑リストを見返し、次週の仮説を1つ決める。
・議事録を当日中にAIで要約し、関係者へ送る。
・病院のカフェで5分、「誰の不安を減らせたか」を自問する。
・中期計画や病院再編の動きを毎月チェックし、提案に反映。

13. さいごに

看護部長会や診療科部長会は、一度のプレゼンで信頼を得るか失うかが決まります。資料を後出しにせず、懸念を先に潰し、次の場を押さえる。質疑が足りなくても「持ち帰り項目」を整理して、再訪時に埋める。地道な積み重ねが最短距離でした。
今日もまた、院内のカフェで短く振り返ります。「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」。答えが一つでもあれば、次のプレゼンはきっと前進します。

14. 具体例:睡眠検査サービスでのプレゼンとPoC

背景

睡眠検査デバイスを病院の人間ドックコースに組み込む提案でした。診療科部長会と看護部長会の両方で説明が必要でした。

進め方

  1. 事前に看護部教育担当と情報部と面談し、データフローとログ、責任分界を整理。
  2. 看護部長会では「申し送り時間と記録負荷の削減」を主軸に、教育計画と問い合わせ窓口を説明。
  3. 診療科部長会では「臨床価値と患者体験」を主軸に、ガイドライン整合と責任の所在を明確に。
  4. PoC計画を30日で提示し、評価指標を「記録時間」「患者説明時間」「エラー件数」に設定。
  5. 倫理・情報審査に必要な資料をプレゼン当日に配布し、事務局と審査日を確認。

結果

看護部長会で「夜勤の申し送りが楽になるならやってみたい」という声が出て、診療科部長会でも合意。倫理・情報審査を90日で通過し、半年で本番導入。患者説明時間が平均10分短縮し、申し送り時間も週あたり90分削減できました。事前に懸念を洗い出したことが効きました。

15. 具体例:生成AIを用いた文書支援の提案

背景

診療科資料と看護記録のドラフトを生成AIで支援する提案。情報部はハルシネーションとデータ漏洩を懸念していました。

進め方

  1. クローズド環境での運用、外部送信不可設定、モデル更新審査を資料で提示。
  2. 根拠提示UIをデモし、監査ログの保存期間と権限を説明。
  3. PoC評価指標を「誤生成率」「作業時間短縮」「承認までの時間」と設定。
  4. 看護部向けに教育計画と問い合わせ窓口を準備し、夜勤帯の再教育手順も明記。
  5. 倫理委員会に「学習データの範囲」「院内データ非使用」を明文化した資料を提出。

結果

PoCで資料作成時間を平均30%短縮、誤生成は5%未満、承認リードタイムを20%短縮。情報部が「管理できるなら進めたい」と判断し、本番導入へ進みました。

16. 具体例:申し送りボードのデジタル化

背景

紙の申し送りボードをデジタル化する提案。看護部は「入力手間が増えるのでは」と不安でした。

進め方

  1. 現行フローを夜勤帯も含めて観察し、入力ステップを最小化したUIを提案。
  2. オフライン時の代替フローと、障害時の責任分界を明文化。
  3. 教育を15分の動画+15分のハンズオンで設計し、夜勤向けにも再教育枠を設定。
  4. PoC評価指標を「入力時間」「転記ミス件数」「申し送り時間」で設定。
  5. 情報部とデータ保存とログの範囲を合意。

結果

申し送り時間が1件あたり平均2分短縮、転記ミスが半減。看護部長から「新人の教育がラクになった」とコメントをいただき、他病棟への横展開が決定しました。

17. おまけ:プレゼン前日のチェック

  • 目的と議題が一次資料に掲載されているか
  • 配布方法(紙/電子)と事前送付を確認済みか
  • 持ち時間と質疑時間、タイムキープの役割分担を合意済みか
  • データフロー・ログ・責任分界・PoC計画の最新版を準備したか
  • 教育計画と問い合わせ窓口を資料に記載したか
  • 反社・利益相反、内部統制の説明を用意したか
  • 次のアクション(必要資料、担当、日程)をスライドに入れたか
  • バックアップ用に紙資料を数部印刷したか
  • タイマーと予備バッテリーを持ったか
  • 「誰の時間を減らすか」を一言で説明できるか

18. まとめ

看護部長会・診療科部長会でのプレゼンは、準備の質がそのまま信頼に跳ね返ります。課題共有→安全性と責任分界の先出し→教育・サポート→効果とKPI→PoC計画→次の場を押さえる、という流れを徹底するだけで、進み方が大きく変わりました。
今日も院内のカフェで、次のプレゼンプランを練ります。誰の時間を減らし、どの懸念を潰すか。それを言葉にできれば、次もきっと前進できます。

追加リソース

伴走支援の進め方、事例、費用感はLPに掲載しています。詳細は詳しくはこちらからご覧ください。

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