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【完全版・詳細解説】フードテックとヘルスケアの融合による新たな価値創造

2026/02/14

【完全版・詳細解説】フードテックとヘルスケアの融合による新たな価値創造

「いいトクホ(特定保健用食品)を作ったんですが、どこに置けば売れますか?」 そんな相談をよく受けます。 答えは一つ。「モノが良いだけじゃ、棚(売り場)は取れませんよ」。

はじめまして。ヘルスケアサービス企業で営業部長をしている中村大樹です。 以前は健康食品メーカーで、ドラッグストアやスーパーのバイヤー相手に、1ミリ単位の棚取り合戦(棚割交渉)をしていました。 今はその経験を活かし、代理店網の構築や、新しい販路の開拓をやっています。

最近、「フードテック」という言葉が流行りですね。 代替肉、完全栄養食、パーソナライズサプリ。 技術はすごい。それは認めます。 でも、営業の現場から見ると、「これ、誰がどうやって売るの?」と首をかしげたくなる商品が山ほどあります。 ハイテクな食品も、最後はお客様の口に入らなければただの在庫です。

本記事では、キラキラした技術論ではなく、フードテック商品を「どうやって流通させ、生活者に届けるか」という、私の得意なドブ板営業の視点から、ヘルスケア×食の未来について語ります。


第1章:フードテック市場のリアル ~「美味しい」だけじゃ売れない~

1. 「健康」と「味」のトレードオフ

現場で一番の壁はこれです。 「体にいいのは分かった。でもマズいじゃん」。 かつての青汁がそうだったように、健康食品は「良薬口に苦し」で許されてきました。 しかし、フードテックの時代は違います。 代替肉(大豆ミート)が普及し始めたのは、環境意識が高まったからではなく、「普通にハンバーグとして美味しくなったから」です。 私がかつて担当した減塩食も、病院食のような味気なさでしたが、出汁の技術で「濃い味」を実現してから、爆発的に売れました。 技術の使い所は、「健康機能」よりも「我慢の解消(ギルトフリー)」にあるのです。

2. 売り場の「カテゴリー・エラー」問題

完全栄養パンを開発したスタートアップの話です。 彼らはスーパーの「パン売り場」に置いてもらおうとしました。 しかし、そこには100円の菓子パンが並んでいます。そこに300円の栄養パンを置いても、「高い」としか思われない。 正解は、「サプリメント売り場」か「オフィスのお菓子売り場(小腹満たし)」でした。 フードテック商品は、既存のカテゴリーに当てはまらないことが多い。 だからこそ、「どの棚に置くか(競合を誰と定義するか)」というポジショニング戦略が、技術開発以上に重要になります。

3. 「継続」という最大のハードル

アプリやガジェットと違い、食品は「リピート(継続購入)」が全てです。 初回は珍しさで売れます。 しかし、2回目を買ってもらうには、「習慣化」の壁を越えなければなりません。 D2C(直販)モデルが注目されていますが、定期購入(サブスク)の解約率は驚くほど高い。 私たちは代理店(置き薬の現代版のような訪問事業者)を通じて、「手渡しで届ける」アナログな手法と組み合わせることで、この継続率を維持しています。


第2章:最新トレンド ~「個の時代」の食と健康~

1. パーソナライズド・ニュートリション(完全個別化食)

尿検査や遺伝子検査の結果に基づいて、「あなたに足りない栄養素」を配合したサプリやカレーが届くサービス。 これは「究極の顧客囲い込み」です。 一度データを預けてしまえば、他社に乗り換えるコスト(スイッチング・コスト)が高くなるからです。 営業的にも、一度契約すればLTV(顧客生涯価値)が計算できる、非常に美味しいモデルです。

2. 病院食・介護食のDX

人手不足の病院厨房では、「凍結含浸」などの技術を使った、柔らかいのに形があるムース食などが普及しています。 これは「患者さんの喜び」であると同時に、「調理スタッフの省力化」というBtoBの課題解決ソリューションです。 私が今、代理店を通じて熱心に売り込んでいるのがこの分野です。 「給食業務を委託するより、このテック食品を入れた方がコストが下がりますよ」という提案は、事務長に響きます。

3. 従業員向けの「置き社食」

オフィスに専用冷蔵庫を置き、健康的なサラダや惣菜を補充するサービス。 これは「福利厚生」予算で導入されるため、財布の紐が緩い。 しかも、毎日従業員の目に触れるので、最強のタッチポイントになります。 ここでの喫食データ(何時、誰が、何を食べたか)は、企業の健康経営レポートにも活用できる、一石二鳥のビジネスモデルです。


第3章:代理店網を活用した「面」の攻略法

ネット広告(D2C)が高騰する今、私が推奨するのは、既存の流通網(代理店)に乗せる「ピギーバック(おんぶ)」戦略です。

1. 既存ルートに乗せる

例えば、高齢者にお弁当を配食している事業者。 彼らは毎日、おじいちゃんおばあちゃんの家に行きます。 そのお弁当と一緒に、「機能性スープ」や「高タンパクデザート」を届けてもらう。 新たな物流コストをかけずに、ターゲット層にダイレクトにアプローチできます。 代理店(弁当屋)にとっても、客単価(アップセル)が上がるので、喜んで協力してくれます。

2. 代理店へのインセンティブ設計

代理店は「売りやすいもの」しか売りません。 フードテック商品は説明が難しい(機能性が複雑)ので、敬遠されがちです。 私は、代理店の営業マン向けに「3分で話せるトークスクリプト」と「マンガで分かるチラシ」を用意します。 そして、「3ヶ月継続してくれたら、紹介料を上乗せ」というストック型のインセンティブを設計します。 彼らが「売ってあげたい」と思う仕組みを作れるか。それが営業部長の腕の見せ所です。

3. オフラインでの「試食」体験

どれだけデータを並べても、「食べて美味しい」という体験には勝てません。 私たちは、フィットネスクラブや調剤薬局の軒先を借りて、試食会を繰り返しました。 そこで「意外と美味しいね」と言ってもらい、その場でQRコードから定期購入に誘導する。 地味ですが、このO2O(オフライン・トゥ・オンライン)の導線が、最もCPA(顧客獲得単価)が安かったりします。


第4章:異業種からフードテックに参入する際の注意点

注意点1:食品表示法と景品表示法

ここが最大の地雷原です。 「免疫力を高める」「血液サラサラ」といった表現は、トクホや機能性表示食品の届出をしていない限り、一発アウトです。 パッケージの裏面表示(一括表示)の文字の大きさまで、法律で決まっています。 軽い気持ちで「スーパーフード」などと謳うと、回収命令(リコール)で会社が飛びます。 必ず専門家を入れるか、私たちのような流通のプロに相談してください。

注意点2:賞味期限と在庫リスク

食品には寿命があります。 「1/3ルール(納品期限)」という商習慣があり、賞味期限の1/3を過ぎた商品は、スーパーに納品できません。 テック系企業は在庫管理が甘く、大量の廃棄ロスを出しがちです。 最初は日持ちする「ドライ食品(常温)」から始めるのが鉄則です。冷蔵・冷凍(チルド・フローズン)は、物流コストも跳ね上がります。

注意点3:製造委託先(OEM)の選定

自分たちで工場を持つのはリスクが高すぎます。 しかし、小ロットを受けてくれるOEM工場は少ない。 私は、自分のコネクションを使って、地方の稼働率が下がっている食品工場を探し出し、「隙間時間で作ってくれませんか」と交渉します。 彼らもラインを埋めたいので、Win-Winになります。


第5章:明日から使えるアクション・チェックリスト

あなたの「すごい食品」を、誰が売るのか想像してください。

  • [ ] その商品は「美味しい」か? ブラインドテストで競合に勝っているか?
  • [ ] ターゲット顧客が普段買い物をする場所に、その商品を置くルートはあるか?
  • [ ] 機能性表示食品の届出(SR)を行う予算と期間を確保しているか?
  • [ ] 代理店や販売パートナーに渡す「マージン」は確保されているか?(原価率が高すぎないか?)
  • [ ] PL法(製造物責任法)保険に加入しているか?(食中毒リスクなど)
  • [ ] 初回の最低ロット数(MOQ)と、賞味期限のバランスは適正か?

【実録】ケーススタディ:機能性おやつのオフィス導入

IT企業 C社の事例

【課題】 エンジニアがデスクでお菓子ばかり食べており、肥満や夕方の集中力低下が問題になっていた。 健康的なものを勧めても、面倒くさがって買いに行かない。

【導入施策】 オフィスの一角に「集中力アップ・ステーション」を設置。 血糖値が急上昇しにくい低GIのチョコレートや、GABA入りのグミなどを配置。 支払いはPayPayなどのキャッシュレス決済。

【結果】 「わざわざコンビニに行かなくていい」という利便性が受け、利用率80%超え。 会社側も「間食を禁止するより、賢い間食(ヘルシースナッキング)を推奨する」方針に転換。 導入した菓子メーカーにとっては、オフィスが「サンプリング(宣伝)の場」となり、そこからECサイトへの流入も増えた。


よくある質問(FAQ)

Q. 機能性表示食品を取るにはいくらかかりますか? A. 既存のシステマティックレビュー(SR)を使えば、数十万円~数百万円で可能です。新たに臨床試験をするとなると数千万円かかります。まずは既存成分(難消化性デキストリンなど)を配合して届出を出すのが、低コストで「機能性」を謳う近道です。

Q. ドラッグストアに置きたいのですが。 A. いきなり全国チェーンは無理です。まずは「問屋(卸)」の口座を開く必要があります。または、地域密着の小規模チェーンで実績を作り、「これだけ売れました」というPOSデータを持って、大手問屋に商談に行くのが王道です。

Q. 海外展開は難しいですか? A. 食品は国ごとに規制(添加物、アレルゲンなど)が全く違うので、ハードルは高いです。まずは越境ECでテストするか、現地の法規制に詳しいアドバイザーと組む必要があります。今はアジア圏で「日本式サプリ」の人気が高いので、チャンスはあります。


現場で使える!重要用語解説

  • 機能性表示食品:
    • 事業者の責任で、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品。トクホよりハードルが低く、フードテックの主戦場です。
  • HACCP(ハサップ):
    • 食品衛生管理の国際基準。これに対応していない工場で作った食品は、大手流通には乗せられませんし、輸出もできません。
  • 棚割(たなわり):
    • スーパーなどの陳列棚の配置計画。春と秋の「棚替え」シーズンに向けて、半年以上前からバイヤーへの提案合戦が行われます。

コラム:胃袋をつかむ営業

「営業は足で稼げ」と言いますが、食品営業は「胃袋」も使います。 私が若手の頃、どうしても契約を取りたい代理店の社長がいました。 何度行っても会ってくれない。 そこで私は、自社の商品を使ったレシピを考案し、自分で調理してタッパーに詰めて持って行きました。 「社長、これ、うちの商品で作った減塩弁当です。味見だけでも!」 社長は苦笑いしながら食べてくれ、「うまいな、これ」と。そこから口座が開きました。

フードテックだ、DXだと騒がれますが、食の本質は変わりません。 「美味しい」「体にいい」「誰かに教えたい」。 そのシンプルな感動を、どうやってバトンリレーでお客様まで届けるか。 テクノロジーは、そのバトンを軽くするためだけの道具です。 最後に走るのは、人(営業)なんです。

もしあなたが、素晴らしい技術を持ちながら、売り方が分からず倉庫に在庫を抱えているなら、私に声をかけてください。 一緒に、その「宝の持ち腐れ」を、お客様の「笑顔」に変えましょう。


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