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【完全版・詳細解説】フェムテック市場の拡大と今後のビジネス展開

2026/02/12

【完全版・詳細解説】フェムテック市場の拡大と今後のビジネス展開

「生理や更年期の話を、会議室でするのは恥ずかしい」 そんな空気、まだあなたの会社にありますか?

こんにちは、高橋美穂です。 製造業の新規事業担当として、かつては産業用ロボットのプロジェクトにいましたが、現在は「フェムテック(Femtech)」事業の立ち上げをリードしています。 私自身、40代になってホルモンバランスの変化に振り回される日々。 「なぜ、このつらさを解決する技術が今までなかったの?」 その個人的な怒りと、ビジネスマンとしての勝算を持って、この市場に挑んでいます。

フェムテックは決して「女性だけのニッチ市場」ではありません。 世界で5兆円規模になると予測される、巨大なブルーオーシャンです。 しかし、参入企業の多くが、「なんとなくピンク色のアプリを作って終わり」という失敗を犯しています。 この市場の難しさは、技術ではなく、「タブー視されてきた文化」と「複雑怪奇な薬機法」にあります。

本記事では、製造業出身で規制対応(レギュレーション)に揉まれてきた私の視点から、フェムテック市場で「本当に稼げる」ビジネスモデルと、避けて通れない法規制のポイントについて、シビアに解説します。


第1章:フェムテック市場の現在地 ~バズワードから社会インフラへ~

1. 「我慢」が「市場」に変わった瞬間

  • 市場規模: 経済産業省によると、生理痛や更年期障害など、女性特有の健康課題による経済損失は年間約3.4兆円と試算されています。この巨大な損失を「解決すべき市場」と捉え直したのがフェムテックです。
  • 具体例: 例えば「吸水ショーツ」。かつてはナプキンしか選択肢がありませんでしたが、「蒸れる、ズレる、ゴミが出る」というストレスを技術で解決しました。この市場はわずか数年で数十億円規模に急成長し、今ではユニクロやGUなどの大手アパレルも参入する「日常の風景」になりました。

2. 男性経営者・投資家の変化

  • 変化の波: 「女性の問題でしょ?」と無関心だった男性経営者たちの意識が、ESG投資の流れで劇的に変わりました。
  • 事例: あるIT企業では、女性エンジニアの離職率が高いことに悩み、フェムテックサービス(低用量ピルのオンライン処方と費用補助)を導入しました。その結果、生理痛による欠勤が激減し、離職率も15%改善。「これはコストではなく、生産性向上のための投資だ」という認識が広がっています。

3. 日本特有の「更年期」マーケット

  • 社会的背景: 日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しています。働く女性の半数以上が45歳以上になる未来が見えているため、「更年期離職」は経営リスクそのものです。
  • 市場動向: 「更年期=ホットフラッシュ(ほてり)」というイメージだけでなく、「イライラ」「不眠」「うつ」などのメンタル不調をケアするオンライン相談サービスや、ホルモン値を自宅で測れるキットへの需要が急増しています。企業が従業員のために契約するBtoBモデルが主流になりつつあります。

第2章:参入障壁としての「薬機法」の壁

私の担当分野ですので、ここは詳しく(そして厳しく)書きます。 フェムテック製品の多くは、この「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」の壁にぶつかります。

1. 「診断」「治療」は言えない(NGワードの罠)

  • 落とし穴: 例えば、高精度の排卵日予測デバイスを作ったとします。技術的にどれだけ正確でも、パッケージやWebサイトに「排卵日が分かる」と書いた瞬間、それは「医療機器」とみなされます。
  • リスク: 医療機器としての承認(PMDA申請)を取らずにそう宣伝すれば、未承認医療機器の広告・販売として逮捕されます。「リズムを知る」「タイミングをチェック」といった曖昧な表現しかできず、消費者に「何に使うものか分からない」と思われて失敗するスタートアップが後を絶ちません。

2. 医療機器申請への挑戦(クラスIIの世界)

  • 本物の壁: 私たちは、あえてイバラの道である「管理医療機器(クラスII)」の取得を目指しました。具体的には、骨盤底筋を鍛えて尿漏れを防ぐデバイスです。
  • メリット: 「医療機器」として認証されれば、「尿漏れの改善」と堂々と謳えますし、医師が患者に勧めることもできます。雑貨としての競合品(怪しい美容グッズ)を一掃できます。
  • コスト: 開発から承認まで3年、数億円かかりましたが、この「参入障壁」こそが、後発企業に対する最強の防御壁(Moat)になっています。

3. オンライン診療とのセット販売

  • 抜け道(正攻法): モノ単体で効果を謳うのが難しい場合、「サービス」と組み合わせるのが定石です。
  • ビジネスモデル: 例えば、ホルモン検査キット自体は「検体を送るだけの箱(雑貨扱い)」とし、その結果を「医師がオンライン診療で診断・解説する」スキームにします。これなら、診断行為を行っているのは医師(ヒト)なので、法的にクリアです。「モノ(フェムテック)」×「ヒト(医療従事者)」のハイブリッドモデルこそが、規制の厳しい日本における最適解だと確信しています。

第3章:ビジネスモデルの勝ち筋 ~データ活用とBtoB展開~

1. サブスクリプションコマース

生理用品やサプリメントなど、消耗品の定期購入は安定収益の基盤です。 しかし、単に届けるだけではAmazonに勝てません。 アプリに入力された体調データ(周期、気分の波)に合わせて、「今月のあなたにはこのハーブティーがおすすめ」とパーソナライズして届ける。 この「私のことを分かってくれている感」が、解約率(チャーンレート)を下げる鍵です。

2. 法人向け福利厚生プラン

前述の通り、今一番熱いのがここです。 私たちは、月経管理アプリの法人版を開発しました。 女性社員は無料で使え、会社側には「部署ごとの不調者の割合(個人は特定できない形)」がレポートされます。 会社はそれを見て「営業部の女性に負荷がかかっているな、空調や休憩室を見直そう」と対策が打てます。 企業への導入提案では、「女性活躍推進法」や「健康経営優良法人認定」への加点要素になることをアピールするのが鉄則です。

3. 不妊治療のファイナンス支援(Benefit)

  • 概要: 不妊治療は精神的・身体的苦痛に加え、「経済的苦痛」が大きいです。
  • モデル: 企業が従業員向けの保険(ポリスィー)として、不妊治療サポートサービスに加入します。
    • 従業員は、提携クリニックでの治療費が割引になったり、看護師による24時間相談が受けられたりします。
    • 企業側は、「優秀な女性社員の離職防止」というROI(投資対効果)を得られます。
    • 米国ではCarrot Fertilityなどがユニコーン企業になっていますが、日本でもこの「企業がお金を出す」モデルが急成長しています。

第4章:異業種から参入する際の注意点

製造業の皆さん、ここを間違えないでください。

注意点1:男性だけのチームで作らない(ジェンダー・ギャップ)

  • 失敗例: ある大手家電メーカーが、全部おじさんのチームで「生理痛緩和デバイス」を開発しました。機能は完璧でしたが、色がドぎついピンクで、操作音が大きかった。「職場のトイレでこんなの使えない」とSNSで袋叩きに遭いました。
  • 鉄則: 意思決定層(PMクラス)に必ず女性を入れてください。ターゲットユーザーと同じ属性のメンバーがいないと、非言語的なニーズ(肌触り、ポーチに入れた時の見え方など)を拾えません。

注意点2:科学的根拠(エビデンス)への投資

  • 失敗例: 「つけるだけで妊娠しやすくなる腹巻」のような、エビデンスのない商品を売ると、景品表示法違反で刺されますし、何よりユーザーの信頼を一瞬で失います。
  • 鉄則: 監修医(産婦人科医)をつけ、小規模でもいいので「使用前後のデータ」を取ってください。「〇〇大学との共同研究」というお墨付きは、初期のブランディングにおいて最強の武器になります。

注意点3:社会課題解決(ソーシャルインパクト)の視点

  • 失敗例: 「儲かりそうだから」という下心が見えると、フェムテック界隈のコミュニティから排斥されます。
  • 鉄則: 「なぜ私たちがやるのか(Why Us?)」を語ってください。「弊社の女性エンジニアが更年期で苦しんだ経験から生まれました」といったナラティブ(物語)が、メディアやユーザーの共感を呼び、応援されるブランドを作ります。

第5章:明日から使えるアクション・チェックリスト

あなたのフェムテック事業案は、このリストをクリアしていますか?

  • [ ] その製品は「雑貨」か「医療機器」か、法的定義を整理したか?
  • [ ] ターゲットの女性(ペルソナ)に、開発段階でヒアリングをしたか?
  • [ ] 監修医(産婦人科医など)のリストアップと打診は済んでいるか?
  • [ ] 広告表現が薬機法に抵触していないか、専門家(弁護士・薬事コンサル)にチェックを受けたか?
  • [ ] 企業の「健康経営担当者」に向けた提案資料はあるか?
  • [ ] プライバシーポリシー(個人のセンシティブな情報の扱い)は万全か?

【実録】ケーススタディ:更年期向け相談チャットの導入

大手IT企業 A社の事例

【課題】 女性管理職の比率を上げたいが、40代後半で体調不良を理由に昇進を辞退したり、退職したりするケースが相次いでいた。 上司(男性)には相談しにくく、本人も「更年期だ」と認めたくない心理があった。

【導入施策】 匿名で産婦人科医や助産師にLINEで相談できる「更年期サポートサービス」を全社導入。 費用は全額会社負担。 利用事実は会社には通知されない(プライバシー保護)。

【結果】 導入後半年で利用率が40%を超えた。 「実は眠れなくてつらかったが、病院に行くほどではないと思っていた。相談して漢方を処方してもらい楽になった」という声が多数。 離職率の低下だけでなく、女性社員のエンゲージメントスコアが大幅に向上した。


よくある質問(FAQ)

Q. フェムテックは男性にも関係ありますか? A. 大いにあります。「メンテック(男性の妊活や更年期)」も市場として立ち上がりつつありますし、パートナーの健康を理解することは男性のQOLにも直結します。私たちは「カップルで使う妊活アプリ」も開発しています。

Q. 薬機法の広告規制を回避するコツは? A. 「個人の感想です」という打ち消し表示は、今はもう通用しません。「言い換え(パラフレーズ)」の技術が必要です。「治る」ではなく「整える」、「改善する」ではなく「サポートする」。この微妙なニュアンスを扱えるライターを見つけてください。

Q. 大手企業が参入してきませんか? A. ユニクロ(吸水ショーツ)などの大手が参入してきましたが、それは市場認知が広がった証拠で、歓迎すべきことです。大手はマス向けの汎用品しか作れません。特定の悩み(例:産後ケア特化、アスリート特化)に絞ったニッチトップ戦略なら十分勝てます。

Q. 集めた個人データ(生理周期など)の扱いは? A. 最もセンシティブな情報なので、銀行レベルのセキュリティが必要です。「匿名加工情報」として企業に提供する場合も、ユーザーへの事前同意(オプトイン)を分かりやすく取ることが必須です。データ活用で稼ぐモデルは、信頼を失うと一発で終わります。

Q. 男性向けの「メンテック」との違いは? A. 根本は同じ「性差医療(性別による違いを考慮した医療)」です。フェムテックのノウハウ(ホルモンデータ解析など)は、そのまま男性の妊活や更年期(LOH症候群)ケアに応用できます。将来的に「性別を問わないウェルビーイング」へ統合されていくでしょう。

Q. 海外展開は可能ですか? A. 可能です。特にアジア圏(中国、東南アジア)は、日本と同様に「生理を隠す文化」があるため、日本のキメ細かいフェムテック製品(高品質な吸水ショーツなど)が非常に受け入れられやすいです。「Made by Japan」の信頼感は健在です。


現場で使える!重要用語解説

  • 月経随伴症状:
    • PMS(月経前症候群)や月経困難症など、生理に伴う不調の総称。ここがフェムテックの最大市場です。
  • セクシャルウェルネス:
    • 性の健康。日本ではまだタブー視されがちですが、プレジャーテック(性具)も含め、欧米では急成長分野です。
  • 妊孕性(にんようせい):
    • 妊娠するための力。卵子凍結サービスなどは、この「将来の妊孕性を温存する」ための技術として注目されています。

コラム:私の「怒り」が原動力

私がこの事業を志願した時、役員会で「女の悩みなんて市場になるのか?」と鼻で笑われました。 その時の悔しさ、怒り。 それが今の私の原動力です。

製造業の私たちは、これまで「より速く、より正確な」機械を作ることに命をかけてきました。 でも、人間は機械ではありません。特に女性の体は、毎月変化し、ライフステージごとに劇的に変わります。 その「ゆらぎ」を否定せず、テクノロジーで優しく包み込むこと。 それが、これからの製造業が目指すべき「人間中心のイノベーション」ではないでしょうか。

同じように、組織の壁や規制の壁にぶつかって悔しい思いをしている新規事業担当者の皆さん。 その「怒り」こそが、新しい市場を切り拓くエネルギーです。 一緒に、この“当たり前”を変えていきましょう。


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