医療・ヘルスケアのスタートアップを立ち上げ、最初にぶつかった壁は営業リソース不足でした。優秀な営業を採用できず、採用しても定着せず、病院や法人に提案する時間が足りない。外資系コンサル出身として戦略は描けても、現場で手を動かす人手が足りない。そんなときに活用したのが支援会社・代行会社・コンサルとの組み合わせでした。大阪・関西・近畿の病院やBtoB企業を回る中で学んだ「外部パートナーの選び方、役割分担、SLA、内製化までの道筋」をまとめます。
1. 外部パートナーを使う前に決めること
- 目的の明文化:リード創出か、商談化か、PoC・稟議支援か、オンボーディングか。
- 線引き:自社で必ず握る領域(シナリオ、価格、条件交渉、キーマン合意)と、外部に任せる領域(アウトバウンド、資料初稿、ノンコア業務)を決める。
- 期間と出口:90日で何を内製化するかを定義し、延長時の条件も決めておく。
- KPIとSLA:面談設定、商談化率、PoC合意数、稟議通過、回収期間、レスポンスSLA、インシデント報告期限など。
- コンプラ:反社・再委託禁止、データアクセス範囲、情報セキュリティの遵守を契約に。
2. 支援会社・代行会社・コンサルの違いと使い分け
- 支援会社(伴走型):シナリオ設計、キーマンマップ、PoC設計、稟議セット、教育まで共に作る。内製化がゴール。
- 代行会社:リードリスト、架電・メール、アポ獲得、一次商談実行。短期成果と母数づくりが得意。
- コンサル:戦略設計と課題整理、組織設計を得意とするが、実行はパートナーと組むことが多い。
- ハイブリッド:初期は支援会社で型を作り、代行で母数を増やし、内製化しながらコンサルに戦略レビューを頼む。
3. 役割分担のモデル(ファネル別)
- リード創出:代行がリスト精査とアウトバウンド。支援会社がスクリプトを設計。
- 商談化:代行が一次商談設定、支援会社が同席し課題深掘りとキーマン特定。
- 提案・PoC:支援会社+自社が主導し、代行は調整役。コンサルは評価指標設計を支援。
- 稟議・クロージング:自社+支援会社。価格・条件は自社が握る。
- オンボーディング:自社が主導し、支援会社が教育とドキュメント整備を支援。代行はリマインドや資料送付を担当。
4. 契約で必ず決めるSLA・R&R
- 応答時間:問い合わせ一次回答、インシデント報告(例:24時間以内)。
- 面談設定数:週/月の目標と温度感の基準。
- ログ共有:面談メモ、学び、課題を週次で共有するフォーマット。
- 再委託禁止・反社:違反時の即時解除条項。
- データ管理:リードデータ、医療情報、個人情報のアクセス範囲とログ。
- 教育:医療・ヘルスケアのマナー、情報セキュリティ、病院での振る舞いを研修する頻度。
- 移管計画:90日後にどのタスクを自社へ移すかのマイルストーン。
5. 価格感と契約期間(目安)
- 支援会社:月50〜150万円+成果連動(PoC→受注率など)、3か月〜。
- 代行会社:月30〜100万円+面談設定/商談化の成果連動、3か月〜。
- コンサル:月額orプロジェクトフィー、戦略と設計が中心。
- ハイブリッド:初月は支援重め、2〜3か月目は代行比率を上げ、3か月目以降は内製化と見直し。
6. ケーススタディ(関西・近畿での3例)
ケース1:大学病院DX案件(文書生成)
- 課題:情報部・看護部・倫理委員会の合意が課題。
- 役割分担:支援会社がPoC設計と稟議セット、代行が情報部/MEへの面談増。
- 成果:90日でPoC合意、回収期間11か月で稟議通過、系列病院に横展開。
ケース2:在庫・購買最適化(民間病院グループ)
- 課題:購買・薬剤・臨床工学の調整不足。
- 役割分担:支援会社がワークショップとKPI設計、代行が購買担当との接点拡大。
- 成果:半年で在庫圧縮15%、廃棄20%減、3病院に展開。
ケース3:製造業向けSaaS(一般BtoB・関西)
- 課題:リード不足と提案精度のむら。
- 役割分担:支援会社がシナリオと資料を7日で作成、代行が1か月で15件面談獲得。
- 成果:3か月で面談数3倍、受注率1.5倍、回収期間短縮。
7. よくある失敗と回避策
- 役割が曖昧:漏れ・重複が発生 → R&RとSLAを契約に明記。
- ログが貯まらない:学びが属人化 → 週次で学びをテンプレに反映。
- 価格だけで選ぶ:品質低下・ブランド毀損 → 医療マナーとガバナンス理解を重視。
- 内製化計画なし:外部依存が長期化 → 90日で移管マイルストーンを設定。
- 地域特性を無視:関西・近畿の再編や働き方KPIを入れない → 温度が上がらない。
8. 30・60・90日プラン
0〜30日
- 目的と役割分担を決め、契約にSLA/R&Rを明記。
- シナリオ・資料・プレイブック・PoCテンプレを整備。
- 反社チェック、再委託禁止、データアクセス範囲を確認。
31〜60日
- 代行でアウトバウンド、支援会社で同席・課題深掘り。
- 面談ログを週次で共有し、スクリプトと資料を更新。
- 審査日(倫理・情報・購買・役員会)を押さえ、PoC準備を進める。
61〜90日
- PoC結果を稟議セットに格納し、回収期間・TCO・働き方KPIを提示。
- 内製化トレーニングを開始し、伴走タスクを自社へ移管。
- 横展開プランを提示し、予算・人員を確保。
9. KPIと改善サイクル
- 面談設定数、商談化率、PoC合意率、稟議通過率、回収期間、TCO、時間外削減、問い合わせ件数、内製化進捗。
- 改善サイクル:週次で詰まりを1つ決め、テンプレ更新→翌週試す→結果を記録→月次で総括。
10. 代理店・外部パートナーとの契約交渉のコツ
- 価格より先に役割とSLA、コンプライアンスを決める。
- 成果連動はバランスよく(面談設定、PoC合意、稟議通過など複数指標)。
- 3か月単位で見直せる契約にし、更新時に条件を再調整。
- 重大違反時の解約条件を明記。
- 「誰の時間をどれだけ減らすか」を共有し、目的を揃える。
11. ノンコア業務の外出し(学会展示・資料作成・議事録など)
- 学会展示:ブース設営・撤去・資材管理はBPO/代行に任せ、キーマン対応に集中。
- 資料作成初稿:生成AI+代行で初稿を作り、現場で手直し。
- 議事録・要約:AIで要約し、支援会社が整理。
- デモ機管理:搬送・清掃・保守をルール化し、代行に委託。
- インサイド業務:リードナーチャリングの定型タスクを代行に任せる。
12. 働き方改革と地域要件を組み込む
- 時間外削減を数字で:週・月・年で算出し、稟議に入れる。
- 地域再編との整合:大阪・関西・近畿の病院再編や中期計画に沿ったストーリーを作る。
- 短時間商談:15〜30分で終わる構成を用意し、現場の時間を奪わない。
- データ管理:院内閉域やVPN、ログ保持、再委託禁止を明確に。
13. 内部リンクと導線設計
- 課題記事→解決記事→LPの流れを意識し、本文中に自然に「詳しくはこちら」を配置。
- サイドバーや固定バナーで「医療業界特化 伴走型営業支援サービス」を案内。
- CTAでは「誰の時間をどれだけ減らすか」を繰り返し、悩みと提案を結びつける。
14. よくある質問(Q&A)
Q:外部に任せるとブランドが毀損しませんか?
A:医療マナーと情報管理を研修し、SLAに再委託禁止・反社・データ範囲を入れればリスクは下げられます。
Q:コストが増えませんか?
A:初期はコストが増えますが、回収期間を明示し、内製化で徐々に外部比率を下げれば総コストは落ちます。
Q:どこまで内製化すべきですか?
A:提案初稿とPoC設計、稟議セットを自社で回せる状態を目安に。アウトバウンドは代行を残す選択もあります。
15. まとめ
営業リソース不足は、正しく外部パートナーを組み合わせれば乗り越えられます。役割とSLAを明確にし、学びを仕組みに残し、90日ごとに内製化を振り返る。関西・近畿の現場で学んだのは、このシンプルな型が一番効くということ。今日も院内のカフェで5分だけ振り返ります。「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」。答えが一つでもあれば、次の一歩は軽くなります。
また病院へ。
追加リソース
外部パートナー活用のSLA例や伴走型支援の進め方をLPにまとめています。詳細は詳しくはこちらをご覧ください。
16. ケーススタディ(2例追加)
ケース4:法人向けインフラSaaS(近畿エリア)
リードが不足し、セールスも1名。代行がアウトバウンドし、月20件の面談を確保。支援会社がシナリオとPoC設計、稟議セットを7日で整備。PoC評価指標を3つに絞り、60日で稟議通過、回収期間12か月で提示。内製化計画も同時に進め、90日で初稿とPoC設計を自社で回せるようになった。
ケース5:医療機器導入(大阪の基幹病院)
情報部・ME・看護部・経営企画が多層で、キーマン合意が課題。支援会社が合意形成と資料セット、代行が情報部/看護部への面談を増やし、審査日を押さえた。PoCを45日で実施し、時間外削減と転記ミス減を数字で提示。回収期間11か月で稟議通過、グループ3院に展開。
17. 追加チェックリスト(15項目)
- 目的と役割分担を全員で合意したか
- SLAとR&Rを契約に明記したか
- 反社・再委託禁止・データアクセス範囲を定義したか
- 面談ログ共有のフォーマットを決めたか
- 学びを週次でテンプレに反映しているか
- 内製化のマイルストーンを90日で設定したか
- 働き方KPI(時間外削減)を数字で示せるか
- 中期計画・地域再編情報(大阪・関西・近畿)を提案に織り込んだか
- PoC計画に評価指標・撤退条件・費用負担を明記したか
- 稟議セットにTCOと回収期間、代替案比較を入れたか
- 横展開プロトコル(契約・教育・データ移行・サポート)を用意したか
- デモ機やノンコア業務の外出し範囲を決めたか
- サイドバーや本文中に自然なLP導線を置いたか
- 面談後のフォロー(資料送付・Q&A)を期限内に実施しているか
- 「誰の時間をどれだけ減らすか」を繰り返しメッセージしているか
18. さいごに(振り返りの習慣)
外部パートナーは万能ではありません。線引きとSLA、学びの共有、内製化のロードマップがあってこそ力を発揮します。関西・近畿の現場で学んだのは、今日の小さな振り返りが明日の速度を決めること。院内のカフェで5分だけ、「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」を自問し、次の訪問に向かいます。
また病院へ。
19. 追加のQ&A
Q:複数の外部パートナーを同時に使うと混乱しませんか?
A:ファネルごとに担当を明確にし、週次で1枚にまとめたステージ管理表を共有すると混乱が減ります。ステージオーナーを決めると意思決定が早まります。
Q:医療・ヘルスケア特有のマナー教育は誰がすべきですか?
A:自社が責任を持ち、支援会社・代行会社・コンサルのメンバー全員に初回研修を実施します。撮影・録音禁止、院内ネットルール、感染対策などは必ず先出し。
Q:成果連動はどう設計すべきですか?
A:面談設定数だけでなく、商談化率やPoC合意、稟議通過など複数指標に分散すると過剰な数稼ぎを防げます。品質指標(クレーム件数、ログ提出率)も入れると良いです。
20. リスク管理の具体策
- 情報漏洩リスク:リードや院内情報を個人PCに保存しない。共有は指定ツールのみ。アクセス権とログを管理。
- ブランド毀損リスク:病院での振る舞い(撮影・録音禁止、時間厳守、名刺・身分証携行)を徹底。違反時のペナルティを契約に。
- スケジュール遅延リスク:審査日や役員会日程をカレンダー化し、逃した場合の影響を事前に共有。余裕を持った納期設定を徹底。
- 人依存リスク:面談ログと学びをテンプレに残し、属人化を防ぐ。2名体制で主要案件に入る。
- 法務リスク:反社・再委託禁止、成果連動の条件、途中解約条件を明文化し、法務とも連携。
21. 6000字バージョン調整メモ
本稿は6000文字超を目安に、チェックリストとケーススタディ、Q&A、導線設計、リスク管理まで盛り込んでいます。運用しながら不要箇所は適宜削ってお使いください。
22. 参考にした内部リソースの整備
- プレイブック:キーマンマップ、トーク、FAQ、資料リンク、ログフォーマットを1冊に統合。
- デモ機・サンプル管理表:搬送・回収・清掃・保守の担当と締切を明記。
- 週次ダイジェスト:面談数、学び、次週の仮説、テンプレ更新箇所を1ページで共有。
- 研修コンテンツ:医療マナー、情報セキュリティ、関西・近畿の商習慣を30分で学べる動画とスライドを用意。
- LP/CTA確認リスト:内部リンクの整合とリンク切れチェックを週次で実施。
23. 最終の一言
外部パートナーは足りない手足を補うだけでなく、学びを加速させる存在です。線引きと約束事、学びの仕組み、内製化の道筋さえ握れば、短期間でも成果は出ます。今日も病院のカフェで5分、「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」を考え、次の訪問に向かいます。
また病院へ。
大きな成長市場です。
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