営業ノウハウ・販路開拓

決裁者に届く営業資料の作り方(法人営業編) — 関西の現場で磨いた実務ノウハウ

2025/11/25

決裁者に届く営業資料の作り方(法人営業編) — 関西の現場で磨いた実務ノウハウ

医療・介護領域のコンサルとして、大阪・関西・近畿の病院や法人に提案を繰り返してきました。決裁者に届く営業資料は「短く、正確で、再現性がある」ことが絶対条件です。支援会社・代行会社・コンサルの立場で、営業・事業開発・販路開拓をする方に向けて、決裁者が欲しがる資料づくりの具体手順をまとめます。病院・医療・ヘルスケアの文脈を多めにしていますが、一般BtoBにもそのまま使えます。

1. 決裁者は何を見ているか(5つの着眼点)

  • 時間とリスク:誰の時間をどれだけ減らし、どんなリスクを下げるか。
  • 回収期間とTCO:いつ回収でき、総コスト(導入・保守・教育・運用)がどれくらいか。
  • 整合性:中期計画、地域戦略(大阪・関西・近畿)、働き方改革KPIとの整合。
  • 実装確度:データ・セキュリティ、責任分界、PoC設計、教育計画。
  • 横展開性:グループ病院や他部門、他拠点へのスケールプラン。

2. 資料構成(7枚構成の基本形)

  1. 課題と効果サマリ:誰の時間を何分減らすか、リスク/インシデント/転記ミスをどれだけ減らすか。
  2. 運用フロー:Before/Afterの業務フロー。夜勤や新人教育、問い合わせ動線も記載。
  3. 安全性・データ:データフロー、ログ、アクセス権、モデル更新、責任分界。
  4. PoC計画:目的、期間、評価指標(3〜5個)、撤退条件、費用負担、体制。
  5. 効果試算:時間外削減→人件費換算、回収期間、TCO、代替案比較、働き方KPIとの紐付け。
  6. リスクと対策:障害時フロー、代替手順、問い合わせSLA、教育計画。
  7. 横展開・スケジュール:グループ病院/拠点への展開手順と追加コスト、審査日程、マイルストーン。

3. 1枚目の書き方(課題と効果サマリ)

  • 一文で課題:「看護部の申し送りと記録に夜勤1人あたり週90分かかっている」など具体的に。
  • 一文で解決:「DXツールで夜勤1人あたり週60分削減、転記ミス25%減」など数字で。
  • 導入理由(Why now):中期計画、病院再編、働き方改革、地域の再編スケジュール(関西・近畿)に紐づける。
  • 次の場を提示:合同デモ/PoC設計会の日程を記載し、進み方を示す。

4. 運用フローの描き方

  • Before/Afterを対比:役割(看護部・情報部・ME・経営企画/現場・IT・購買)と時間を明記。
  • 夜勤・新人教育を入れる:夜勤帯や新人オンボーディングの手順も書くと「現場を見ている」と伝わる。
  • 問い合わせ動線:一次(L1)/二次(L2)の連絡先、応答時間、代替フローを記載。
  • デモ機や機器がある場合:設置・回収・清掃・保守の手順も小さく図示。

5. 安全性・データのページ

  • データフロー図:入力→処理→保存→出力の経路を図解。病院なら院内閉域/オンプレ、VPN、暗号化を明記。
  • ログとアクセス権:誰が何を見られるか、保持期間、監査方法。
  • モデル更新(生成AIの場合):更新頻度、審査手順、ロールバック、データ持ち出し禁止設定。
  • 責任分界:障害・インシデント時の切り分け、代替フロー、SLA。

6. PoC計画のポイント

  • 評価指標は3〜5個:時間外削減、インシデント/転記ミス、問い合わせ件数、TCO、患者体験(待ち時間/説明時間)など。
  • 期間と範囲を限定:30〜90日、対象病棟/部門を明確に。
  • 撤退条件を明記:成果が出ない場合の停止条件を合意し、安心感を与える。
  • 体制と費用負担:誰が何時間関与するか、費用を誰が負担するかを先に示す。

7. 効果試算と稟議セット

  • 時間→人件費換算:週・月・年で算出し、回収期間を月数で表示。
  • 代替案比較:現状維持、人材派遣、代行会社、支援会社との比較を1表で。
  • 働き方改革KPI:時間外削減、夜勤負荷、心理的ストレス低減を数字と現場の声で。
  • TCO内訳:導入・保守・教育・運用。セルフメンテとリモートサポートで下げる案を入れる。
  • リスクと対策:障害時の代替手順、問い合わせ窓口、バックアップ。

8. 横展開とスケジュール

  • 横展開プロトコル:グループ病院/他部署への展開手順、教育キット、データ移行、サポート体制。
  • スケジュール:審査日(倫理・情報・購買・役員会)、PoC期間、稟議、契約、オンボーディングのマイルストーン。
  • 担当と責任:自社・支援会社・代行会社・コンサル・病院側の担当を明記。

9. 文章とデザインのコツ

  • 短文・箇条書き中心:決裁者は短時間で見る。1スライド3〜5行が目安。
  • 数字と固有名詞:時間、件数、費用、回収期間、病棟/部署名を入れる。
  • 図解を多めに:フロー、データフロー、責任分界は図で。
  • 「簡単です」を封印:手順と時間で安心を示す。
  • リンク導線:本文中に「詳しくはこちら」を自然に置き、LPや詳細資料へ。内部リンクも「課題記事→解決記事→LP」の流れを作る。

10. よくある失敗と回避策

  • 後出し資料で審査遅延:データフロー、ログ、責任分界、PoC計画を初回で渡す準備を。
  • 働き方KPIを入れ忘れる:時間外削減や夜勤負荷の数字を必ず入れる。
  • 稟議で「なぜ今」が弱い:中期計画、病院再編、地域の再編スケジュールに紐づける。
  • 横展開の絵がない:単院/単部署で止まる。早めに横展開1枚を用意。
  • 文字だらけ:決裁者は時間がない。図と数字で伝える。

11. 関西・近畿の現場で効いたポイント

  • 文化差を理解:大阪・京都・神戸で決裁のスピードや会議体が違う。資料のトーンも微調整。
  • 再編と働き方:地域医療構想や再編計画、時間外KPIに必ず触れる。
  • 移動最適化:近畿内で訪問をまとめ、商談数を増やす。
  • 支援会社・代行会社・コンサルの活用:現場文化に明るいパートナーを選ぶ。

12. チェックリスト(30項目抜粋)

  1. ターゲットと課題を1行で書いたか
  2. Before/Afterの運用フローを図解したか
  3. 夜勤・新人教育を含めたか
  4. データフロー・ログ・責任分界を1枚にしたか
  5. PoC計画(目的・期間・評価指標・撤退条件)を明記したか
  6. 評価指標を3〜5個に絞ったか
  7. 回収期間とTCOを数字で示したか
  8. 働き方KPIを入れたか
  9. 代替案比較を表で入れたか
  10. リスクと代替フローを明記したか
  11. 横展開プロトコルを1枚にしたか
  12. 審査日・マイルストーンをカレンダー化したか
  13. 役割分担(自社・支援会社・代行・コンサル・顧客)を明記したか
  14. 大阪・関西・近畿など地域要件を反映したか
  15. 内部リンクとLP導線を自然に入れたか

13. 日々のルーティン

  • 面談後10分で「良かった点/詰まり/次の打ち手」をメモし、資料とトークに反映。
  • 週末に失注・差し戻し理由を見返し、次週の仮説を1つ決める。
  • 月1で中期計画・再編情報・働き方KPIをアップデート。
  • 病院のカフェで5分、「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」を自問。

15. ケーススタディ(3例)

ケース1:生成AI文書支援(大学病院)

情報部・看護部が懸念するデータフローとハルシネーション対策を1枚にまとめ、PoC評価指標を「申し送り時間」「誤生成率」「問い合わせ件数」に絞った。稟議セットに回収期間11か月、時間外削減を明記し、90日で審査通過。資料枚数は7枚に抑え、図を多用したことで決裁スピードが上がった。

ケース2:在庫・購買最適化(民間病院グループ)

購買・薬剤・臨床工学の要件がバラバラで、資料が長文化していた。課題と効果を1枚で出し、ワークショップで得た現場の声を引用。TCOと回収期間、横展開プロトコルを1枚ずつに整理し、半年で在庫圧縮15%、廃棄20%減。

ケース3:BtoB製造業向けSaaS(関西の中堅企業)

決裁者は現場の時間削減とコストだけを知りたかった。冒頭で「設備保全の停止時間を月12時間削減、回収期間10か月」と示し、残りはフロー図と数字中心。7枚で稟議を通し、系列2社に横展開。

16. 表紙と目次の作り方

  • 表紙:課題と解決を一文で、対象部署と地域(大阪・関西・近畿)を入れると具体性が増す。
  • 目次:7枚構成を明記し、決裁者が欲しい情報に直行できるようにする。
  • 連絡先と次の場:表紙か巻末に「合同デモ/PoC設計会の日程候補」「問い合わせ窓口」を入れる。

17. デザイン・レイアウトの注意

  • フォントと色を統一し、強調は最小限。
  • 図は「矢印+ラベル」でシンプルに。
  • 1スライドは3〜5行、20〜40文字程度。
  • 余白を残し、視認性を優先。
  • 数字と固有名詞を太字で揃える。
  • 医療・ヘルスケアでは「簡単」「すぐ」を避け、手順と時間を数字で。

18. 内部リンクと動線

  • 課題記事→解決記事→LPの流れを作る。資料の補足として内部リンクを置き、詳しく知りたい人をLPへ誘導。
  • 本文中に「詳しくはこちら」を自然に置き、LPやテンプレ集へリンク。
  • サイドバーや固定バナーで「医療業界特化 伴走型営業支援サービス」を案内し、回遊の導線を増やす。
  • CTAでは「誰の時間をどれだけ減らすか」を繰り返し、課題と提案を結びつける。

19. 用語ミニメモ

  • SLA:サービスレベル合意。応答時間、報告頻度、インシデント対応など。
  • PoC:概念実証。目的・期間・評価指標・撤退条件を明文化する。
  • TCO:総保有コスト。導入・保守・教育・運用を含む。
  • 回収期間:投資回収に必要な月数。労務削減や逸失利益回避を入れる。
  • 反社・再委託禁止:契約で明記し、違反時の対応を決める。
  • 働き方改革KPI:時間外削減、休暇取得、夜勤負荷など。
  • 中期計画:2025〜2027など病院・企業の方針。整合があると稟議が速い。

20. テンプレートの管理と共有

  • バージョン管理を行い、更新履歴を残す。
  • 面談ログや失注理由を週次で反映。
  • 支援会社・代行会社・コンサルとも同じテンプレを共有し、提案のトーンを揃える。
  • 医療・ヘルスケアでは倫理・情報セキュリティのテンプレを必携。
  • 一般BtoBでも情報セキュリティとバックアップ、責任分界のページを標準化。

21. スライド別の文例(コピペ用)

  • 課題と効果:「看護部の申し送りと記録に夜勤1人あたり週90分かかっています。文書支援AIで週60分削減、転記ミス25%減、回収期間11か月を見込んでいます。」
  • 運用フロー:「〇〇時:看護師が入力→AIが案を提示→確認・保存(30秒)。問い合わせはL1:当社窓口(平日9-18)L2:技術担当(24h一次回答)。」
  • データ・安全性:「データは院内閉域で完結、ログは10年保存、アクセス権3段階。モデル更新は四半期審査後に実施、ロールバック可。」
  • PoC計画:「目的:夜勤申し送り時間削減。期間:45日。評価指標:時間外、転記ミス、問い合わせ件数。撤退条件:時間外削減5%未満、誤生成率5%超。」
  • 効果試算:「時間外削減:週60分×52週×人件費○円=年間○円。回収期間:11か月。TCO:導入○円+保守○円+教育○円+運用○円。」
  • 横展開:「初期導入:本院〇病棟→月+1病棟→グループ3病院へ展開。教育キットとサポートは共通化。」

22. 稟議通過後のフォロー資料

  • オンボーディング計画:Day0/30/60/90で誰が何をするか、教育とリリース管理を明記。
  • 問い合わせフロー:L1/L2、連絡先、SLA、障害時の代替手順。
  • 変更管理:バージョンアップ時の周知方法、審査手順、影響範囲。
  • 定着KPI:利用率、再教育件数、問い合わせ件数の推移を月次で共有するフォーマット。
  • 横展開ロードマップ:次の病棟・病院へのスケジュールと必要リソース。

23. 質疑で詰まりやすいポイントと回答例

  • Q:データ持ち出しはないか?
    A:院内閉域で完結し、外部送信不可です。ログは10年保存し、アクセス権を3段階で管理します。
  • Q:夜勤で使えるか?
    A:夜勤帯のフローを観察し、ステップを3つに簡素化しました。夜勤向けに15分の再教育も用意しています。
  • Q:回収期間は?
    A:時間外削減を人件費換算し、11か月で回収見込みです。TCO内訳も提示しています。
  • Q:障害時は?
    A:代替フローと責任分界、連絡先を明記しています。一次は当社サポート、二次は技術チームで24h一次回答。

24. メール・送付文のひな型

件名:〇〇(課題)に関するご提案資料共有の件
本文例:
「いつもお世話になっております。〇〇(社名)の井戸です。先日のヒアリングで伺った〇〇の課題について、課題と効果のサマリ、運用フロー、安全性、PoC計画、効果試算、横展開プランを7枚にまとめました。お手すきでご確認ください。次回は〇月〇日の合同デモに向け、PoC評価指標のすり合わせをお願いできればと思います。資料中に問い合わせ窓口(L1/L2)も記載しております。どうぞよろしくお願いいたします。」

25. よくある落とし穴(デザイン・進行編)

  • 色が多すぎる:重要情報が埋もれる。2〜3色に絞る。
  • 図が複雑:矢印とラベルだけにし、凡例を簡潔に。
  • 時間オーバー:質疑込みで15〜30分に収める。足りなければ「持ち帰り項目」を整理。
  • 資料のバージョン混在:最新版に日付と版数を入れる。
  • リンク切れ:”詳しくはこちら”のLPリンクは都度テスト。内部リンクも確認。

26. 追加のチェックリスト(15項目)

  1. 表紙に「課題と効果」を一文で書いたか
  2. スケジュールに審査日(倫理・情報・購買・役員会)を入れたか
  3. 教育計画に夜勤・新人・再教育を含めたか
  4. 反社・再委託禁止・データアクセス範囲を契約に反映できるか
  5. 成果事例を「課題→打ち手→数字→横展開」で揃えたか
  6. 働き方KPI(時間外削減)を数字で示したか
  7. 回収期間を月数で示したか
  8. PoCの撤退条件を書いたか
  9. インシデント時の連絡先とSLAを明記したか
  10. 横展開時の追加コストと体制を書いたか
  11. 内部リンクとLP導線を自然に配置したか
  12. 面談ログの反映日を決めたか
  13. プレイブック更新の頻度を決めたか
  14. 地域(大阪・関西・近畿)の再編情報を反映したか
  15. 「誰の時間をどれだけ減らすか」を繰り返し入れたか

14. まとめ

決裁者に届く資料は、短く、数字があり、実装までの道筋が見えるものです。医療・ヘルスケアでも一般BtoBでも、支援会社・代行会社・コンサルをどう組み合わせるか、関西・近畿の地域性をどう織り込むかで通り方が変わります。今日も院内のカフェで5分だけ振り返ります。「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」。答えが一つでもあれば、次の提案はきっと前に進みます。
また病院へ。

追加リソース

決裁者向け資料のテンプレートや伴走支援の進め方はLPにまとめています。詳細は詳しくはこちらをご覧ください。

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