代理店任せの営業が頭打ちになり、ブランド毀損やクレームも経験しました。大阪・関西・近畿の病院やBtoB企業を回りながら、代理店を選び直し、SLAと契約、教育と同行を整えることで再成長できました。ここでは、医療・ヘルスケア領域を中心に、代理店開拓の成功・失敗から学んだ実務ポイントをまとめます。営業・事業開発・販路開拓で代理店を活用する方向けです。
1. 代理店が必要なシーン/不要なシーン
- 必要なとき:広域カバレッジが必要(大阪・関西・近畿から全国へ)、訪問/デモ機運搬の手足が不足、既存顧客フォローで手一杯、業界経験者が少ない。
- 不要または限定的なとき:意思決定が多層で合意形成が難しい案件(大学病院DXなど)は直販+伴走が中心。価格競争のみの市場では差別化が薄く、代理店も疲弊する。
- 部分活用:アウトバウンドやデモ機運用などノンコア業務のみ外出しし、キーマン合意と稟議は自社で握る。
2. 選定時に見るべきポイント(10項目)
- 医療/ヘルスケアの実績(病院・診療科・規模)。
- 財務健全性と反社チェック。
- 情報セキュリティと内部統制(再委託禁止、データアクセス範囲)。
- 専任担当の有無と営業/技術サポートの体制。
- リード報告と面談ログの品質。
- デモ機・サンプル管理の手順。
- 学会・展示対応の経験。
- 大阪・関西・近畿など地域の商習慣・再編情報への理解。
- 働き方改革KPIへの配慮(短時間商談、時間外配慮)。
- 生成AIやクラウド案件の説明力(データフロー、ログ、責任分界)。
3. 契約とSLAで潰すべきリスク
- SLA:応答時間、面談設定数、報告頻度、インシデント報告(24h/72h)、デモ機管理。
- 再委託禁止・反社:違反時の即時解約条項。
- データアクセス範囲:個人情報・医療情報の扱い、ログの共有方法。
- 教育:医療マナー(撮影/録音禁止、時間厳守、感染対策)、情報セキュリティ、病院での振る舞いを研修。
- 成果連動:面談設定だけでなく商談化率、PoC合意、稟議通過など複数指標でバランスを取る。
- 契約期間:3か月単位で見直し、更新時にSLAと価格を再協議。
4. 成功事例(3つ)
ケース1:在庫・購買最適化(民間病院グループ)
問題:購買・薬剤・臨床工学の合意が取れず停滞。
打ち手:医療実績がある代理店を再選定し、SLAで報告・デモ機管理を明文化。ワークショップを支援会社と組み、代理店にも同席いただく。
結果:半年で在庫圧縮15%、廃棄20%減、3病院に展開。
ケース2:文書生成DX(大学病院)
問題:情報部の審査を代理店が後回しにし、差し戻し。
打ち手:支援会社と組み、データフロー・責任分界・ハルシネーション対策を初回で提示。代理店は面談設定とフォローに集中。
結果:90日でPoC合意、回収期間11か月で稟議通過。系列病院へ横展開。
ケース3:一般BtoB SaaS(関西製造業)
問題:面談数が少なく、提案ばらつき。
打ち手:代行にアウトバウンドを委託、代理店に営業プレイブックとログフォーマットを提供。週次で同行とフィードバック。
結果:3か月で面談数3倍、受注率1.5倍。
5. 失敗事例(3つ)
失敗1:再委託で品質低下
代理店が下請けに再委託し、マナー違反でクレーム。
対処:再委託禁止と罰則を契約に明記。即時解約し、新代理店に切替。再教育を徹底。
失敗2:面談だけ増えて商談化せず
量を追求し、温度感やキーマン情報が不足。
対処:温度感判定とキーマン情報を必須フィールドにし、商談化率をKPIに設定。支援会社がスクリプトを再設計。
失敗3:デモ機管理の不備
デモ機が返却遅延・破損・滅菌不備で信頼を失う。
対処:搬送・清掃・保守のチェックリストとSLAを作成。貸出前後の確認と写真記録を義務化。
6. 30・60・90日プラン(代理店開拓版)
0〜30日
- 候補代理店のショートリストと評価軸(実績・コンプラ・体制)を作成。
- 契約ドラフトにSLA/R&R、再委託禁止、反社、データ範囲を明記。
- プレイブック(トーク、FAQ、ログ、PoC/稟議テンプレ)を用意。
31〜60日
- 代理店教育(マナー、セキュリティ、資料の使い方)を実施。
- 週次で案件レビューと同行、スクリプト・資料の更新。
- デモ機・学会対応の外出しルールを実装。
61〜90日
- KPIレビュー(面談→商談→PoC→稟議、回収期間、クレーム数)。
- 内製化・役割見直し、契約更新/修正。
- 成功パターンをテンプレ化し、他エリア/代理店に横展開。
7. KPIとモニタリング
- 面談設定数、商談化率、PoC合意率、稟議通過率、回収期間、TCO、クレーム件数、ログ提出率、デモ機滞留/破損件数。
- ダッシュボードで週次更新し、詰まり1つに絞って改善する。面談ログの品質もチェック。
8. 内部リンクと導線
- 課題記事→解決記事→LPの流れを意識し、本文中に自然に「詳しくはこちら」を配置。
- サイドバーや固定バナーで「医療業界特化 伴走型営業支援サービス」を案内。
- CTAは「誰の時間をどれだけ減らすか」を繰り返し、課題と提案を結びつける。
9. よくある質問(Q&A)
Q:価格競争になりませんか?
A:評価指標に商談化率や稟議通過率、回収期間を入れ、面談数だけで評価しない。運用価値(時間外削減、TCO、働き方KPI)のストーリーを代理店にも教育。
Q:断られた代理店への対応は?
A:礼儀を守り、理由とフィードバックを共有。将来の協業余地を残す。
Q:複数代理店を並行すると混乱しませんか?
A:エリアや業界で担当を分け、ステージ管理表とSLAを共通にする。週次の合同MTGで情報を揃える。
10. 地域と文化差への対応
- 大阪・京都・神戸での違い:決裁スピードや会議体が異なるため、代理店にも地域ごとの会議体や稟議フローを共有。
- 病院再編と中期計画:関西・近畿の再編スケジュールを代理店と共有し、「今年やる理由」を合わせる。
- 働き方改革:短時間商談(15〜30分)を好む病院が多い。時間外削減の数字を前面に出すトークを代理店にも教育。
11. 教育と同行の型
- 初期研修:医療マナー(撮影/録音禁止、時間厳守、感染対策)、情報セキュリティ(データ持ち出し禁止、ログ共有、アクセス権)、資料の使い方、働き方KPIと地域(大阪・関西・近畿)の再編情報。
- ロールプレイ:情報部/看護部/ME/経営企画、それぞれへの説明を代理店と一緒に練習。
- 同行頻度:月1〜2回の同行で、良かった点/改善点を即共有。ログをテンプレに反映。
- フィードバックループ:週次で面談ログをレビューし、スクリプトと資料を更新。代理店が現場で得た学びをプレイブックに吸収する。
12. デモ機・学会対応の実務
- デモ機:搬送・清掃・保守のチェックリストをSLA化。貸出前後の写真と状態記録を義務化。滅菌や院内搬送ルールも明記。
- 学会展示:装飾・設営・撤去・資材管理をBPO/代理店に委託し、営業はキーマン対応に集中。撮影/録音禁止、名刺・リードカードの管理、資料回収のルールを共有。
- トラブル対応:破損や滅菌不備があれば24h以内に一次報告、72h以内に再発防止策を提出。
13. ダッシュボードとオペレーション
- ステージ管理:リード→商談→PoC→稟議→受注の各ステージで代理店と自社の責任を可視化。
- 数値と質:面談数だけでなく、商談化率、PoC合意率、稟議通過率、回収期間、クレーム件数を週次で共有。
- ログ品質:課題・キーマン・懸念・次アクションの4行を必須にし、未入力はステージを進めないルールに。
- 移動とエリア:大阪・関西・近畿で訪問をまとめ、移動時間を削減。オンライン併用もルール化。
14. 追加ケーススタディ(2つ)
ケース4:デモ機トラブルをSLAで解消
代理店がデモ機を滅菌せず返却し、信頼を失いかけた。SLAに滅菌・写真記録・24h報告を追記し、チェックリストを共有。以降、破損・滅菌不備ゼロ。滞留も30%減り、同じ台数で扱える案件が増えた。
ケース5:学会展示でのクレーム削減
前回はブース運営で混乱し、リード管理も不十分だった。今回はBPOに設営・撤去を委託し、代理店にはリード管理とバナー/CTA導線の徹底を依頼。リード数が前回比150%、クレームゼロ。
15. 改善サイクル(週次・月次)
- 週次:面談数、商談化率、PoC合意、稟議進捗、クレーム有無を確認。詰まりを1つ選び、翌週の改善策を決める。
- 月次:SLA遵守状況、デモ機/学会トラブル、回収期間、TCO、働き方KPIへの寄与を振り返り、契約・役割分担を見直す。
- 四半期:代理店継続/切替の判断。成功パターンをテンプレ化し、新代理店や他エリアに横展開。
16. よくある反論へのトーク例
- 「価格を下げてほしい」:面談数だけでなく、商談化率や稟議通過率、回収期間、クレームゼロ実績を指標にしているため、値下げは品質低下を招きます。成果連動は複数指標で設定しましょう。
- 「医療のマナーは分からない」:初回研修とチェックリスト、同行でサポートします。撮影/録音禁止、時間厳守、感染対策、名刺・身分証携行を徹底します。
- 「再委託したい」:品質とコンプラの観点で再委託禁止です。必要なら事前相談の上、契約を再設計します。
17. チェックリスト(追加20項目)
- 再委託禁止と罰則を契約に入れたか
- 反社チェックを定期的に更新しているか
- データアクセス範囲とログ共有方法を明文化したか
- 面談ログフォーマットを統一し、提出期限を決めたか
- 商談化率・PoC合意率・稟議通過率をKPIに入れたか
- デモ機/学会のチェックリストとSLAがあるか
- 週次同行と月次レビューを実施しているか
- クレーム報告と再発防止策の期限を決めたか
- 成果連動の指標が偏っていないか(面談数だけになっていないか)
- 横展開プロトコルを作成し、代理店と共有したか
- 移動最適化とオンライン併用のルールを決めたか
- 働き方KPI(時間外削減)や地域再編(大阪・関西・近畿)の情報を代理店と共有したか
- 代理店向けトーク/FAQを用意したか
- リード管理とLP/内部リンクの導線を説明したか
- プレイブックの更新頻度と責任者を決めたか
- 代理店が使う資料の版管理ルールを決めたか
- 24h/72hインシデント報告ルールを適用しているか
- 代理店評価を四半期ごとに実施し、継続/切替を判断しているか
- 契約更新時にSLAと価格を再協議できる条項を入れたか
- 「誰の時間をどれだけ減らすか」を代理店が言える状態か
18. 日々のルーティン
- 面談後10分でログ(課題・キーマン・懸念・次アクション)を記録し、当日中に共有。
- 週末に失注・差し戻し理由、クレーム、SLA違反を見返し、翌週の仮説を1つ決める。
- 月1で中期計画・地域再編(大阪・関西・近畿)・働き方KPIを更新し、代理店にも共有。
- 代理店・支援会社・代行会社との合同MTGを月次で実施し、学びをプレイブックに反映。
- LP/内部リンクの導線を月次でチェックし、最新資料に差し替え。
19. 追加Q&A
Q:代理店と自社でリードの取り合いを防ぐ方法は?
A:エリアや業界、診療科で担当を明確に分け、CRM上でも担当を設定します。週次の合同MTGでステージ管理表を共有し、衝突を防ぎます。
Q:代理店のモチベーション維持は?
A:コンプラ遵守を前提に、成果連動は面談数だけでなく商談化やPoC合意、稟議通過も指標に入れます。表彰とペナルティを事前に合意します。
Q:短時間で決めたいと言われたときは?
A:15〜30分で終わるアジェンダを共有し、働き方KPIに効くポイントを先出し。審査日程だけは必ずその場で押さえます。
20. 稟議・提案セットのサンプル構成(代理店向け)
- 目的と範囲:どの診療科/部署/業界で、何を解決するか。
- 評価指標:3〜5個(時間外削減、転記ミス、問い合わせ件数、TCO、回収期間など)。
- データ・安全性:データフロー、ログ、アクセス権、再委託禁止、責任分界。
- PoC計画:期間、範囲、費用負担、撤退条件、体制。
- 効果試算:時間削減→人件費換算、回収期間、代替案比較、働き方KPI。
- リスクと対策:障害時の代替フロー、問い合わせSLA、教育計画。
- 横展開:グループ病院/拠点へのスケール手順。
- 契約条件:SLA、成果連動、更新・解約条件。
21. 最終メモ
- 「誰の時間をどれだけ減らすか」を代理店が言えるようになるまで伴走する。
- 面談ログの質が商談化率を決める。量と質のバランスを常にチェック。
- 契約は3か月で見直し、SLAと役割をアップデート。
- 代理店はパートナー。敬意と仕組みで共に育てる。
- 院内のカフェで5分、自分にも同じ問いかけを。「誰の時間を減らし、どの懸念を潰せたか」。
22. まとめ
代理店開拓は、選定・契約・教育・同行・レビューの地道な積み重ねです。役割とSLAを明確にし、学びを仕組みに残し、90日で振り返る。関西・近畿の現場で学んだこの型は、病院・医療・ヘルスケアでも一般BtoBでも通用しました。今日も院内のカフェで5分だけ振り返ります。「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」。答えが一つでもあれば、次の代理店との一歩は軽くなります。
また病院へ。
追加リソース
代理店選定のSLA例や伴走型支援の進め方はLPにまとめています。詳細は詳しくはこちらをご覧ください。
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