新人のころ、私は「会えば何とかなる」と信じていました。資料を抱えて走り回り、商談のたびに手応えを感じるものの、受注には結びつかない。ある日、尊敬する先輩に同行したとき、事前準備の深さに衝撃を受けました。先輩は顧客サイトのフッターから決算公告を探し、登壇資料からキーワードを拾い、さらには受付の掲示物まで話題に仕込んでいたのです。「訪問前に勝負は七割決まる」。この一言が私の営業観を変えました。ここからは、私が現場で磨いた「準備の型」を全角で余すことなく共有します。
0.体験談:準備ゼロで失注、準備一時間で逆転
医療機関向けシステムの提案で、私は準備を怠り、事務長から「それ、うちに本当に必要?」と一蹴されました。悔しさのあまり、次の訪問までに一時間を準備に投資。診療報酬改定の影響、他院の導入事例、事務部門の業務量推移をまとめ、質問を五つ用意。結果、同じ事務長から「そこまで調べてくれたなら話を聞こう」と言われ、三ヶ月後に受注。この経験から、準備は単なる礼儀でなく、顧客の時間を有益にする投資だと痛感しました。
1.情報収集:公開情報×一次情報×社内ナレッジの三層
公開情報
- 会社の重点施策を決算短信・中期計画・プレスリリースで把握。特に医療機関なら病床再編や新棟建設、DX投資の記載に注目。
- キーパーソンの登壇資料、インタビュー記事から口癖や関心事を抽出。質問にその言葉を差し込むと共感が生まれやすい。
一次情報
- 前線のスタッフや受付で得られる現場の小さな情報(待合の混雑、張り紙の内容、機器の入れ替えなど)をメモ。現場感のある話題は打ち解けやすい。
- 学会や地域の勉強会で聞いた声をストックし、同業のトレンドとして共有する。
社内ナレッジ
- 過去商談の失注理由、導入後の成功要因をSFAから抽出。CSやマーケに五分でヒアリングし、最新の質問を仕込む。
- 同じ業界を担当したメンバーに「絶対聞くべき質問ベスト三」を聞き、必ず当日のメモに書く。
2.仮説設計:課題→原因→打ち手を一本に絞る
準備で陥りがちなのが「話題を詰め込みすぎる」こと。私は以下の流れで一本化します。
- 課題仮説を一行で書く。「〇〇の目標に対し、××がボトルネック」。
- 原因の当たりを三つだけ持つ(プロセス、人、システム)。
- 打ち手の骨格をA4一枚にまとめる(期間、体制、KPI影響)。
- 事例と数字を一つ添える(工数削減〇%、再入院率▲%など)。
仮説が一本になると、商談で聞くべき質問と見せる資料が自動的に絞れます。
3.商談設計:時間配分と資料の優先順位
時間は有限です。私は三十分・六十分の二パターンで必ず設計します。
- 三十分版:「アイスブレイク五分/現状ヒアリング十分/仮説提示十分/次ステップ五分」。
- 六十分版:「アイスブレイク五分/現状ヒアリング二十分/仮説提示十五分/デモ十分/次ステップ十分」。
資料は三枚でストーリーを作り、詳細は質疑が出たときにだけ開く。これだけで「読む商談」から「対話の商談」へ変わります。
4.決裁パスを外さない質問
失注したときに最も後悔するのは「誰が決めるかを聞かなかった」こと。私が必ず聞くのはこの二つです。
- 「本日以降、導入検討のプロセスはどのように進みますか」
- 「検討に関わる方で、今日まだお会いしていない方はいらっしゃいますか」
この二問で決裁パスを把握し、次の同席者を決める。同行依頼のメールテンプレも事前に用意し、商談後すぐ送ります。
5.準備の型:私の一時間タイムライン
忙しい日でも、一時間あれば準備はできます。私の実例タイムラインを示します。
- 〇〜一〇分:企業サイトと最新ニュースをチェック、重点施策を一行でメモ。
- 一一〜二〇分:キーパーソンの発言や登壇資料を探し、キーワードを三つ抽出。
- 二一〜三五分:SFAで過去接点と失注理由を確認。CSに五分でヒアリング。
- 三六〜五〇分:課題→原因→打ち手を一枚にまとめ、質問を五つ書く。
- 五一〜六〇分:三枚資料の優先順位を決め、決裁パス確認の質問をメモ。カレンダーに次ステップ候補を入れる。
これだけで、商談の質が目に見えて変わります。
6.ケーススタディ:病院物流プロジェクトでの逆転
病院の院内物流改善を提案したとき、初回は「予算がない」で終了しました。二回目の訪問前に、DPCデータから在庫回転日数を試算し、同規模病院での削減効果を数字で示す資料を準備。「予算がない」を「回収できる」に変えるために、五年TCOとROIを簡易で提示。結果、事務部門の課長が乗り気になり、院内勉強会の場をセットできました。数字と仮説があると、商談の空気が変わることを実感しました。
7.同行の活用:準備を共有資産にする
同行者を活かす準備も重要です。私は事前に以下を共有します。
- 商談のゴールと役割分担(誰がヒアリング、誰がデモ、誰がクロージング)。
- 想定質問と回答案。
- 決裁パスと同席者仮説。
同行後は十分でいいので振り返りを実施し、「効いた質問」「刺さらなかった資料」をSFAに記録。これが次の商談準備の教材になります。
8.チェックリスト(訪問前)
- 直近のニュース/IRを読み、質問を三つ用意したか。
- キーパーソンの興味関心をプロファイリングしたか。
- 課題→原因→打ち手の仮説を一本に絞ったか。
- 三十分版/六十分版の時間配分を決めたか。
- 決裁パス確認の質問をメモに書いたか。
- 質疑が出そうな箇所のバックアップ資料をクラウドに入れたか。
- 商談後に送る同行依頼メールとフォロー文面を準備したか。
9.チェックリスト(当日)
- 開始五分前にオンライン・オフライン問わず機材チェックを済ませたか。
- アイスブレイク用の小ネタ(施設掲示物、共通の登壇、業界ニュース)を一つ持ったか。
- 質問を読み上げるだけでなく、相手の言葉を復唱しながらメモを取っているか。
- 時間管理を意識し、残り時間を共有したか。
- 次ステップと宿題をその場で復唱したか。
10.フォローアップの準備までが「事前準備」
商談後二十四時間以内のメール内容も、訪問前に作っておきます。要点整理、宿題、次回候補日時、決裁者同席依頼をテンプレ化。準備の終わりはフォローのスタートラインです。
11.新人育成で使った「準備トレーニング」
新人には「準備の型」を体で覚えてもらうため、以下を実施しました。
- 三十分の模擬商談を週一で実施し、準備した資料と質問をレビュー。
- 現場同行の前に「準備チェックリスト」を一緒に埋める。
- 失注商談の事前準備を振り返り、「何が足りなかったか」を棚卸し。
- 成功商談の準備メモを共有し、全員で再現。
- 朝会で「準備の気づき」を一人一言シェア。小さな習慣が文化になる。
準備をチームの共通言語にすることで、若手でも短期間で商談の質が上がりました。
12.マネージャーの役割:時間を確保し、フィードバックする
準備には時間が必要です。マネージャーとして私が意識したのは「準備時間を守る仕組み」を作ること。架電や内勤の日を設定し、訪問の前日には必ず一時間をブロック。準備内容は録画やワンシートで残し、翌週の定例でフィードバック。準備に投資する文化を作るのが、マネージャーの重要な仕事です。
13.未来の拡張:生成系AIとデータベース
最近は、生成系AIで公開情報を要約し、質問案を自動生成する実験をしています。SFAのデータベースと連携すれば、過去の失注理由から「今日聞くべき質問」をAIが提示することも可能。準備は人の感覚だけでなく、データとテクノロジーで強化できる時代です。
まとめ:準備は顧客への敬意であり、最強の武器
フィールドセールスは「足で稼ぐ」仕事と思われがちですが、足を運ぶ前の準備が、商談の深さとスピードを決めます。公開情報・一次情報・社内ナレッジを束ね、仮説を一本に絞り、時間配分と決裁パスを設計する。準備を積み重ねるだけで、商談の質は驚くほど変わります。今日の訪問の前に、十分でもいいので準備の時間を取ってみてください。きっと相手の表情と商談の展開が変わるはずです。
準備の型化やトレーニング設計を進めたい方は、伴走型でご支援します。お気軽にご相談ください。
14.移動も準備の一部と捉える
現場に行くときの移動も、私は準備時間に組み込みました。電車移動の二十分で決算短信を読み、駅からの徒歩五分で「今日聞きたいこと」を口に出す。車移動なら音声メモでロールプレイをし、駐車場に着いたら一分深呼吸。移動時間を「隙間」ではなく「仕上げの時間」にするだけで、訪問直後の立ち上がりが滑らかになります。
15.アイスブレイクの「引き出し」を持つ
緊張する初回訪問で助けられたのが、現地観察のネタです。受付の掲示物、ロビーのポスター、社内報、地域イベントのチラシ。病院では感染対策の掲示を褒め、製造業では安全衛生ポスターに触れ、IT企業ではウォールアートの作者を聞く。小さな一言で表情が緩み、ヒアリングが深くなりました。私は訪問ごとに「アイスブレイクノート」を一行残し、次回以降の引き出しを増やしています。
16.デモ準備と環境チェック
フィールドセールスは現地デモが多い分、機材トラブルのリスクがあります。私は以下を徹底しました。
- オフライン資料をPDFで端末に保存(回線トラブル対策)。
- 変換アダプタと延長コードを常備。
- 事前に「音が出ます」「デモは五分」と伝え、期待値を合わせる。
- デモの最初と最後に「決裁者が見たい数字」を再掲し、話が逸れないようにする。
これだけで「見せたけど伝わらない」事故が激減しました。
17.失敗からの学び:質問の順番を間違えた日
ある病院訪問で、私は業務改善の話題から入らず、いきなり価格の話をしてしまいました。相手の顔が曇り、以降のヒアリングが浅くなる失敗。後日、同じ事務長に再訪したときは「現場スタッフの残業状況」を先に聞き、課題を一緒に言語化してから価格を提示。結果、比較検討のテーブルに乗せてもらえました。質問の順番が信頼を左右すると痛感したエピソードです。
18.三〇日で準備力を底上げするプラン
短期間でチームの準備力を上げるため、以下の三〇日プランを回しました。
- 一週目:訪問前チェックリストを全員で統一し、朝会で毎日読み上げる。
- 二週目:成功商談と失注商談の準備メモを五本ずつ共有、差分を抽出。
- 三週目:一日一件、ロールプレイを録画し、質問の順番を改善。
- 四週目:決裁パスの確認率をKPIに追加し、週次で掲示。
四週目には決裁者同席率が一二ポイント上がり、商談の進み方が明らかに変わりました。
19.よくある質問(FAQ)
- Q:準備に時間をかけすぎて訪問数が減ります。
A:一時間タイムラインを基準にし、三十分版も用意すると回転率を守れます。 - Q:公開情報が少ない業界ではどうする?
A:現場観察と一次情報(受付・現場スタッフへの雑談)を重視し、同業のヒアリングで補完します。 - Q:決裁パスを聞くと嫌がられます。
A:検討プロセスを教えてもらう形で聞き、担当者の負担を減らすサポートを約束すると受け入れられやすいです。 - Q:資料を減らすのが不安です。
A:三枚で骨格を作り、質問が出たらバックアップ資料を開く運用にすると安心して削れます。
20.三枚資料の作り方(全角サンプル)
私は三枚資料を「課題」「打ち手」「数字」の三構成に固定しました。
- 一枚目:顧客の現状と課題仮説を図解。相手の言葉でキャプションを書く。
- 二枚目:打ち手と進め方。期間・体制・役割をシンプルに。
- 三枚目:数字と再現性。効果指標と他社事例のビフォーアフターを並べる。
この三枚があれば、どの業界でも会話が流れます。詳細は質疑で開く。削ぎ落とすほど、対話が増えました。
21.現場メモの取り方と共有の仕方
訪問中のメモは、後で共有できる形にしておくと資産になります。私は以下のルールにしました。
- メモの左に「発言」、右に「示唆」と「アクション」を分けて書く。
- 相手の言葉を「」でそのまま残す。要約せず生のまま。
- 同行者と帰りのエレベーターで一分振り返り、今日の気づきを一行まとめる。
- 夜のうちにSFAへ転記し、タグで「課題」「決裁」「競合」「感情」を付ける。
この仕組みで、メモが個人の手元で眠らず、チームの準備に再利用できるようになりました。
22.実録:決裁者同席を勝ち取ったフォロー
ある自治体案件で、担当課長との面談後に決裁者が不在でした。帰りのカフェで十分で書いたフォローメールに、課題仮説を三行で再掲し、決裁者向けに「五分だけのサマリー動画」を添付。さらに次回候補日時を二つ、会場とオンライン両方で提示。翌朝、課長から「部長も参加でお願いしたい」と返信があり、二回目で決裁者同席を実現。フォローまでが事前準備と腹落ちした瞬間でした。
23.毎日のミニマムルーチン(全角で五項目)
準備を習慣化するため、私は毎朝これだけはやると決めています。
①今日訪問する企業の最新ニュースを一つ読む。
②決裁パス確認の二問を声に出す。
③三枚資料の見出しだけを読み返し、口に出す。
④アイスブレイクネタを一行メモ。
⑤フォローアップメールの素案に企業名を入れておく。
合計五分ですが、これを続けるだけで「準備ゼロ」の不安が消え、どんな商談でも落ち着いて臨めるようになりました。
24.私の声を取りにいく
訪問後に五分アンケートを送り、「準備に感じたこと」を聞くと学びが増えます。「こちらの資料を先に送ってくれて助かった」「決裁プロセスを聞かれたのは初めてで新鮮だった」などの声が届き、準備のどこに価値があるかが分かりました。ペルソナのフィードバックを月次でまとめ、次の訪問設計に反映すると、準備の質がじわじわ底上げされます。
25.現場体験談:一枚の写真が氷を溶かした
救急指定病院の事務長との初対面は緊張の連続でした。冷たい空気を変えたのは、受付で見つけた「地域防災ポスター」の写真。商談冒頭で「防災の取り組み、地域と連携されていて素晴らしいですね」と切り出した瞬間、事務長の目が柔らかくなり、「実は地域連携を強化したくて」と本音が溢れました。準備の一部として「現場写真を一枚撮る(許可の範囲内で)」を習慣にした結果、アイスブレイクが格段に上手くなり、ヒアリングの深さが変わりました。
26.三〇日・九〇日で準備文化を根づかせるロードマップ
- 一〜七日目:チェックリストを全員で統一し、朝会で読み上げ。成功・失敗商談の準備メモを共有。
- 八〜十五日目:決裁パス確認率と三枚資料の活用率をKPIに設定し、週次で可視化。
- 十六〜三十日目:同行時の振り返りを録音し、良かった準備行動を「模範クリップ」として蓄積。
- 三十一〜六十日目:業界別の質問リストを更新し、仮説の質を上げる。準備時間と受注率の相関をダッシュボード化。
- 六十一〜九十日目:新人オンボーディングに準備トレーニングを組み込み、準備時間を労務管理上も確保する仕組みを整備。
ロードマップを壁に貼るだけで、チームが「いまどのフェーズを強化するか」を迷わず動けます。
27.オンライン+フィールドのハイブリッド準備
訪問とオンラインを組み合わせる商談では、準備の粒度を変えます。オンライン事前ヒアリングで課題仮説を絞り、フィールド訪問では「現場観察+決裁者同席」を狙う。オンライン用の短尺デモと、現場用の紙資料(電波不安対策)を両方用意。訪問前に「オンラインで伺った課題を現場で確認したい」と宣言すると、ヒアリングが深まり、再商談率も上がりました。
28.準備KPIダッシュボード例
- 準備時間(平均/中央値)と受注率の相関
- 決裁パス確認率、決裁者同席率
- 事前送付資料の閲覧率(メール開封・リンククリック)
- 再商談率(準備チェックリスト遵守の有無で比較)
数字で「準備が効いている」ことを示すと、経営も現場も準備に時間を割くことを正当化しやすくなります。
29.同行フィードバックの型:一五分で終わらせる
- 5分:良かった準備行動を二つ言語化(例:質問の順番、アイスブレイクネタ)。
- 5分:改善点を一つだけ選び、次回の具体アクションを決める。
- 5分:SFAへの記録(決裁パス、気づき)を同行者とその場で入力。
時間を区切るとフィードバックが形骸化せず、準備の型が磨かれ続けます。
30.トラブル発生時のリカバリー準備
準備しても現場では必ず想定外が起きます。私は「備え」をテンプレ化しました。
- 機材トラブル:オフラインPDFと紙資料、スマホテザリング、アダプタ常備。
- 決裁者不在:五分サマリー動画と一枚サマリーをその場で送付、次回候補日時を三択提示。
- 競合資料提示:自社の差別化ポイントを三行で言えるようにメモし、競合比較表を即出せるようクラウドに保存。
リカバリー策まで準備することで、想定外の場面でも落ち着いて対応できます。
31.三種類の「事前送付セット」を持つ
訪問前に送る資料は、相手の関心度に合わせて三種類用意します。
- ライト版:一枚サマリーと導入事例だけ。五分で読める。
- スタンダード版:一枚サマリー+三枚資料+二分のデモ動画。十分以内。
- ディープ版:上記に加え、ROI試算シートと競合比較の参考。
「どのセットを送るか」を決めておくと、前日夜でも迷わず準備できます。
32.週次・月次の振り返り質問リスト
- 今週の商談で「準備していて良かったこと/足りなかったこと」は何か。
- 決裁パスを外した原因は情報不足か、質問のタイミングか。
- 事前送付資料の閲覧率と再商談率に相関はあったか。
- 次週、仮説の質を上げるために誰に五分だけ壁打ちするか。
質問を固定すると、振り返りが再現性のある学習になります。
33.業界別ミニケース(抜粋)
- 製造:ライン停止が許されない工場で、訪問前に「直近の品質トラブル速報」を業界紙から拾い、立ち上がり二分で信頼を得た。
- SaaS:CFO面談ではコスト削減より「計画精度向上」を前に置き、Excelの更新頻度を聞く質問を準備。意思決定者の関心に刺さり、翌週の同席を確約。
- 自治体:議会スケジュールと予算案の公開資料を確認し、「〇月議会に間に合う形で提案をまとめます」と伝えたことで、スピード感を評価され受注に繋がった。
業界ごとの文脈を一つでも持ち込むと、商談の深さが変わります。
34.準備の質を高める「五つの観察ポイント」
訪問前後に必ず観察するものを決めておきます。
- 物理環境:掲示物、導線、混雑時間帯、設備の古さ。
- デジタル環境:端末の種類、アプリの使われ方、紙とデジタルの混在比率。
- 人の動き:意思決定者と現場の距離感、会話のトーン。
- 時間の使い方:待ち時間、打ち合わせの開始・終了の正確さ。
- 言葉:看板や社内報に使われるキーワード。
観察ポイントを固定すると、短時間でも濃い情報が集まり、仮説の精度が上がります。
35.まとめの前に:準備は「顧客の時間を守る」行為
準備は自分のためではなく、顧客の時間を最大化するためのものです。十分の準備で三十分の商談が五十分の価値になる。そう捉えると、忙しくても準備時間を確保する意味が腹落ちします。
36.九〇日チャレンジの結果(数値で示す)
チーム全員で準備チェックリストを徹底した九〇日間の変化です。
- 決裁パス確認率:六二%→八八%
- 決裁者同席率:二五%→四九%
- 再商談率:三八%→五四%
- 受注率:一二%→一九%
「準備の数字」を掲示板に貼り続けたことで、準備への投資が文化になり、結果として受注が着実に伸びました。
37.医療・公共向けのガードレール(準備編)
医療・公共領域では準備段階からコンプライアンスに注意します。
- 病院名・患者情報をメモに残さない、録音や写真は必ず許可を取る。
- 効果・効能の表現は客観データのみ、誇大表現はNG。
- 資料・動画は院内規定に合わせて持ち込み可否を確認し、オフライン版も用意。
ガードレールを先に整えると、商談中に言葉を選ぶストレスが減り、対話に集中できます。
38.エグゼクティブ向けブリーフィングの準備
役員・院長クラスが同席する場合、資料と話し方を変えます。
- 一枚サマリーで「投資対効果」「リスク低減」「組織インパクト」を三行で明示。
- 五分以内で終わるストーリーを事前に口に出して練習。
- 「決裁基準は何か」「評価に使う指標は何か」を先に聞く質問を準備。
エグゼクティブは時間が最も貴重です。準備で「結論から話す型」を体に染み込ませます。
39.事例ライブラリと音声クリップの準備
事例をただ羅列するのではなく、「いつでも再生できる音声クリップ」を用意しました。
- 導入決定の瞬間の顧客の言葉を一分にまとめた音声。
- 失注から再浮上した際の学びを語る社内メンバーの音声。
- 業界別のビフォーアフターを語るCS担当の音声。
音声は感情が伝わりやすく、紙の事例より短時間で刺さります。訪問前に端末に入れておき、許可を取って再生します。
40.週次レビュー資料のフォーマット
準備の質を継続的に高めるため、週次レビュー資料を固定しました。
- 一枚目:今週のKPI(決裁パス確認率、同席率、再商談率)。
- 二枚目:準備が効いた商談と、足りなかった商談の対比(質問の順番・送付資料の差分)。
- 三枚目:来週の仮説と準備アクション(誰に聞く、何を送る、何を削る)。
フォーマットを固定すると、レビューが早く終わり、準備の改善に時間を割けます。
41.前日夜の一〇分ルーチン
最後の仕上げは前日夜の一〇分で十分です。
- 明日の訪問先のニュースを一つ読み、アイスブレイクを一行書く。
- 質問の順番を口に出して確認し、決裁パス確認の二問を復唱。
- 一枚サマリーを見直し、数字と事例を最新に差し替える。
- フォローアップメールのテンプレに社名と日程候補を入れて下書き保存。
この一〇分で翌日の安心感が段違いに変わります。準備は「明日の自分へのプレゼント」です。
付録1.業界別の質問リスト(抜粋)
医療・ヘルスケア
- 「診療報酬改定で新たに増えた業務負荷はどこでしょうか」
- 「電子カルテやPACSとの連携で一番困っているのはどの部分でしょうか」
- 「患者満足度向上のために今年強化したい指標はありますか」
製造
- 「現場リーダーの残業が増えるタイミングはいつでしょうか」
- 「品質トラブルが起きた際の情報共有に何分かかっていますか」
- 「段取り替えや立ち上げのリードタイム短縮で目標値はありますか」
IT・SaaS
- 「オンボーディングにかかる期間と、チャーンにつながる主因はどこでしょうか」
- 「エンジニアリソースが詰まるポイントはどのプロセスですか」
- 「サポート問い合わせの一次回答までの時間はどれくらいですか」
付録2.フォローアップメールひな形(事前作成推奨)
件名:本日の要点と次回ご提案について|◯◯株式会社
◯◯様
本日はお時間を頂きありがとうございました。要点を整理いたします。
・現状課題:◯◯の工数増、◯◯の遅延
・原因仮説:◯◯プロセスでの手戻り、◯◯部門との調整負荷
・次回ご用意するもの:◯◯病院の事例シート、簡易ROI試算
次回は◯月◯日(◯)一四時〜一四時三〇分、◯◯課長にもご同席いただけると幸いです。
引き続きよろしくお願いいたします。
◯◯株式会社 小林
事前にひな形を作っておくことで、商談直後に即送信でき、熱量を逃しません。
付録3.準備の投資対効果を可視化する簡易KPI
- 準備時間一時間あたりの受注創出額(受注金額÷準備時間)。月次で追うと投資対効果が明確に。
- 「準備有り商談」と「準備不足商談」の再商談率・受注率を比較。差分が見えれば組織が動きます。
- 決裁者同席率と準備時間の相関を週次で確認。準備が同席の質を高めることを数字で示す。
付録4.ツールキット(私が使っているもの)
- ニュース収集:RSSリーダーで業界メディアを一括チェック、キーワードアラートを設定。
- メモ:クラウドメモに「訪問前メモ」テンプレを用意し、スマホで現場メモも即同期。
- 資料管理:三枚資料とバックアップ資料をクラウドフォルダに整理、オフラインでも閲覧可能に。
- タスク管理:決裁パス確認やフォロー送信をチェックリスト化、朝の五分で確認。
付録5.明日から使える五分ルーチン
- 今日訪問する企業の最新ニュースを一つ読む。
- キーパーソンの名前を三回声に出して読み、呼び間違いを防ぐ。
- 決裁パス確認の二問をメモに書き、ポケットに入れる。
- 次ステップ候補の日程をカレンダーで仮押さえ。
- フォローアップメールのひな形に企業名だけ先に入れておく。
五分でも、商談の質は必ず上がります。まずは小さく始めてみてください。
大きな成長市場です。
ただし、独力での突破には
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