医療・ヘルスケアのスタートアップで、大阪・関西・近畿を中心に病院や法人を開拓しています。少人数で営業・事業開発・販路開拓を回すために、インサイドセールスとフィールドセールスの役割分担を徹底したところ、面談数と商談化率が大きく改善しました。支援会社・代行会社・コンサルを併用しながら、病院・医療・ヘルスケア特有の意思決定プロセスにも対応できる分担方法をまとめます。
1. 分担を決める前に押さえる前提
- 意思決定の多層性:病院では情報部・看護部・ME・経営企画・倫理が絡みます。一般BtoBでもIT/情報・現場責任者・購買・経営が関与。
- 地域と移動:大阪・関西・近畿で移動1時間以内に絞るだけでフィールドの時間が増える。
- リソースと目的:リード創出か、キーマン合意か、PoC・稟議か。目的で分担を変える。
- 外部活用:支援会社=伴走、代行会社=アウトバウンド、コンサル=設計。インサイド/フィールドの補完に使う。
2. 役割分担の基本モデル(医療・一般BtoB共通)
- インサイドセールス(IS)
- リードリスト精査、架電・メール、セミナー・ホワイトペーパー対応。
- 温度感判定(BANT+病院なら審査日/キーマン/働き方KPI)。
- 初回オンライン商談の設定と一次ヒアリング。
- 面談ログと学びの蓄積、スクリプト更新。
- スケジュール調整、移動最適化。
- フィールドセールス(FS)
- 課題深掘り、キーマン特定、合意形成。
- PoC設計(目的・期間・評価指標・撤退条件・費用負担)。
- 稟議セット(労務・TCO・回収期間・リスク・横展開)作成。
- 契約・条件交渉、オンボーディング主導。
- ナレッジ共有と内製化トレーニング。
3. ステージ別の動き(認知〜オンボーディング)
- 認知→興味:ISがアウトバウンド、セミナー、資料送付。病院なら学会展示リードもISで管理。
- 興味→初回商談:ISが設定し、FSまたは支援会社が同席して課題深掘りとキーマン確認。
- 初回→PoC設計:FS主導で評価指標・期間・体制を合意。ISは資料送付と日程調整を担当。
- PoC→稟議:FSが稟議セットを作り、支援会社がレビュー。ISは必要資料を漏れなく送付。
- 稟議→契約→オンボーディング:FSが条件交渉と教育計画を主導。ISは問い合わせ窓口案内とリマインドを担当。
4. 病院・医療・ヘルスケア特有の着眼点
- 審査日程管理:倫理・情報・購買・役員会の日程をISがカレンダー化。逃すと3か月遅れる。
- キーマン情報:ISが初回で情報部/看護部/ME/経営企画の温度を確認し、FSが合意形成を設計。
- 働き方KPI:時間外削減を数字で聞き、FSが稟議に反映。
- データ・安全性:ISがデータフロー・責任分界資料を初回で送付できるよう準備。FSが深掘り質問に対応。
5. 関西・近畿の現場で効いた工夫
- 移動最適化:1日2〜3件で固め、移動1時間以内を原則に。オンラインを活用。
- 文化差対応:大阪・京都・神戸で会議体やトーンが違う。ISが事前に確認し、FSが調整。
- 短時間商談:働き方改革で15〜30分が好まれる。ISがアジェンダ共有、FSが時間管理。
6. 支援会社・代行会社・コンサルとの連携
- 代行×IS:リスト精査と初期架電を代行が担い、ISがスクリプトとログフォーマットを提供。
- 支援×FS:PoC設計、稟議セット、合意形成の同席を支援会社が伴走。
- コンサル:市場・ターゲット再定義、KPI設計、組織設計を支援。
- SLA/R&R:応答時間、面談設定数、ログ提出、インシデント報告、再委託禁止、データ範囲を契約に明記。
7. 30・60・90日で整える
0〜30日
- 役割分担表とSLAを作成。反社・再委託禁止・データ範囲を定義。
- スクリプト・テンプレ(資料、PoC、稟議、ログ)を整備。
- カレンダーに審査日・役員会・学会日程を登録。
31〜60日
- アウトバウンド実行、初回同席で課題深掘り。
- 週次でファネル詰まりを1つ選び、スクリプトと資料を更新。
- 移動を最適化し、面談数を増やす。
- デモ機・学会などノンコア業務を外出し。
61〜90日
- PoC→稟議を加速、稟議セットに働き方KPIと回収期間を入れる。
- 内製化トレーニング(観る→やる→任せる)を実施。
- 横展開プロトコルを用意し、グループ拠点や他診療科へ拡大。
8. KPIと改善サイクル
- IS指標:リード数、接触数、商談化率、審査日取得率、ログ提出率。
- FS指標:PoC合意率、稟議通過率、回収期間、TCO、時間外削減、クレーム件数。
- 共通:サイクルタイム(初回→PoC→稟議)、内製化進捗、横展開速度。
- 改善:週次で詰まりを決め、テンプレ更新→翌週試す→結果記録→月次で総括。
9. ケーススタディ(関西・近畿での3例)
大学病院DX(文書生成)
ISが審査日とキーマン温度を初回で取得、FSと支援会社がPoC設計と稟議セットを作成。90日で審査通過、回収期間11か月。
在庫・購買最適化(民間病院グループ)
ISが購買・薬剤・臨床工学の課題を集約、FSがワークショップとPoC設計を実施。半年で在庫圧縮15%、廃棄20%減。
BtoB SaaS(関西の製造業)
代行+ISで面談数を3倍にし、FSがシナリオと資料を磨いて受注率1.5倍。回収期間短縮。
10. よくある失敗と回避策
- ログが貯まらない:フォーマットを固定し、提出をSLAに。
- 役割ブレ:R&Rを週次で確認し、ズレを即修正。
- 審査日を逃す:カレンダーとリマインド必須。
- 情報漏洩リスク:院内情報を持ち出さない。撮影・録音禁止を徹底。
- 価格勝負:運用価値(時間外削減、TCO、働き方KPI)を稟議セットに入れ、代替案比較で納得を得る。
- 内製化止まり:伴走・代行任せが長期化 → 90日で移管マイルストーンを設定。
11. ツールとテンプレ
- スクリプト集:セグメント別に作成し、週次で更新。
- プレイブック:トーク、FAQ、キーマンマップ、ログフォーマット、資料リンクを集約。
- PoC・稟議テンプレ:目的・期間・評価指標・撤退条件・費用負担・体制。
- ダッシュボード:リード→商談→PoC→稟議→受注、回収期間、働き方KPI、クレーム数。
- チェックリスト:審査資料一式(データフロー、ログ、責任分界)、デモ機管理、学会対応。
12. 内部リンクと導線
- 課題記事→解決記事→LPの流れを作り、本文中に自然に「詳しくはこちら」を配置。
- サイドバーや固定バナーで「医療業界特化 伴走型営業支援サービス」を案内。
- CTAは「誰の時間をどれだけ減らすか」を繰り返し、課題と提案を結びつける。
13. よくある失敗とリカバリ(さらに詳しく)
- ISがキーマン情報を取りこぼす:初回で「審査日」「誰が承認に関わるか」を必ず聞くチェックリストを用意。
- FSが情報部・看護部の懸念に答えられない:データフロー・責任分界・ログ・モデル更新のQAを1枚にまとめ、いつでも提示できるようにする。
- ログが粗い:IS/FSともに4行で「課題・キーマン・懸念・次アクション」を必ず記録。SLAで提出期限を明記。
- 役割ブレ:週次でR&Rを確認し、「誰が、どのステージのオーナーか」を明文化。
- イレギュラー対応が属人化:FAQとエスカレーションルールをテンプレ化し、誰でも同じ質で対応できるようにする。
- 審査サイクルを逃す:倫理・情報・購買・役員会をカレンダー化し、ISがリマインド。逃した場合の影響(3か月遅れなど)も共有し、優先度を理解してもらう。
14. KPIとダッシュボードをもう少し具体的に
- IS:リード数、接触数、商談化率、審査日取得率、キーマン判明率、ログ提出率。
- FS:PoC合意率、稟議通過率、回収期間、TCO、時間外削減(病院)、クレーム件数。
- 共通:サイクルタイム(初回→PoC→稟議)、内製化進捗(初稿作成時間、PoC設計自走度)、横展開速度。
- 可視化:週次のダッシュボードで「詰まり」を1つ選び、改善策と次週の仮説を決める。月次で成果と学びを振り返り、プレイブックを更新。
15. ルーティンとトレーニング
- 観る→やる→任せる(12週間):Week1–2は伴走が主に話し、Week3–6は自社が話して伴走が補足、Week7–12は自社が主導し伴走はレビューのみ。
- 10分振り返り:面談直後に良かった点/詰まり/次アクションをメモし、同日中に共有。
- 週末レビュー:失注・差し戻し理由を見返し、次週に試す仮説を1つ決める。
- 月1アップデート:中期計画、地域の再編(大阪・関西・近畿)、働き方KPIを更新し、スクリプトと資料に反映。
16. ケーススタディ(追加2例)
ケース4:地域基幹病院でのDX提案
ISが初回で倫理・情報の審査日を聞き出し、FSがデータフローと責任分界を先出し。PoC評価指標を「申し送り時間」「問い合わせ件数」「誤生成率」に絞り、90日で審査通過。
ケース5:一般BtoB(関西の製造業)
IS+代行で面談数を3倍にし、FSが課題深掘りとPoC設計を主導。回収期間を12か月で提示し、受注率1.5倍。ダッシュボードで詰まりを週次で解消したことが奏功。
17. チェックリスト(抜粋15)
- IS/FSのR&RとSLAが明文化されているか
- 倫理・情報・購買・役員会の日程をカレンダー化したか
- キーマン(情報部/看護部/ME/経営企画 or IT/現場/購買/経営)が初回で判明したか
- 「誰の時間をどれだけ減らすか」を一文にしたか
- データフロー・責任分界・PoC計画を初回で渡せる準備があるか
- 面談ログ(課題・キーマン・懸念・次アクション)を週次で共有しているか
- PoC評価指標を3〜5個に絞ったか
- 稟議セットに回収期間・TCO・働き方KPIを入れたか
- スクリプトと資料を週次で更新しているか
- 反社・再委託禁止・データ範囲を契約に明記したか
- デモ機・ノンコア業務の外出し範囲を決めたか
- 移動を最適化し、1日2〜3件に収めているか
- 10分振り返り・週末レビューを習慣にしているか
- 内製化マイルストーンを90日で設定したか
- 内部リンクとLP導線を自然に配置したか
18. CRM・データ管理の運用ルール
- ステージ定義を揃える:認知→初回→PoC設計→PoC→稟議→契約→オンボーディング→定着を共通言語に。
- 必須フィールド:課題、キーマン、審査日程、働き方KPI、回収期間の仮説、次アクション。未入力はステージを進めないルールに。
- タグ付け:大阪/関西/近畿、診療科/部署、温度感、審査進捗をタグ化し、リスト抽出しやすくする。
- ログの粒度:4行(課題・キーマン・懸念・次アクション)を必須にし、誰が見ても再現できるようにする。
- アクセス権:医療情報や個人情報を扱う部分は権限を絞り、編集ログを残す。
19. テンプレとドキュメント管理
- プレイブック:トーク、FAQ、キーマンマップ、PoC/稟議テンプレ、ログフォーマット、SLAを1冊に集約。週次で更新履歴を残す。
- スクリプト集:セグメント別に作成し、実際の応酬話法を反映。医療・ヘルスケアでは「簡単です」を避け、手順と時間で安心を示す表現を揃える。
- PoC・稟議テンプレ:目的・期間・評価指標・撤退条件・費用負担・体制を標準化。働き方KPIと回収期間を必ず入れる。
- デモ機/学会チェックリスト:搬送・清掃・保守・撮影/録音禁止の確認を入れる。
- 版管理:日付と版数を明記し、最新版を明示。リンク切れチェックを週次で実施。
20. 追加のQ&A
Q:ISとFSの情報共有頻度は?
A:週次の10〜15分で足ります。ファネル数値と詰まり1つ、学びとテンプレ更新箇所を共有し、翌週の仮説を決めます。
Q:アウトバウンドはどこまで外出しできますか?
A:リスト精査と初期架電/メールは代行に任せられますが、温度感判定とキーマン情報はISが責任を持ちます。
Q:医療特有のマナー教育は?
A:初回に全員(代行・支援会社含む)へ「撮影/録音禁止、院内ネット、感染対策、時間厳守、名刺・身分証携行」を研修します。
Q:回収期間が長い場合は?
A:働き方KPIやTCO削減を数字で示し、横展開による規模効果をセットで提示すると納得感が上がります。
21. 最終チェック(追加10項目)
- CRMのステージ定義と必須フィールドが統一されているか
- トーク/FAQ/テンプレの最新版が共有されているか
- 審査日程(倫理・情報・購買・役員会)が押さえられているか
- PoC評価指標が測定可能か(ログ設定・入力ルールがあるか)
- 稟議セットに回収期間・TCO・働き方KPIが入っているか
- 外部パートナーとのSLA(ログ提出、再委託禁止、反社、データ範囲)が有効か
- デモ機/学会対応のチェックリストが整備されているか
- 移動最適化(大阪・関西・近畿内でのまとめどり)ができているか
- 内製化マイルストーン(90日)が進捗しているか
- LP/内部リンクの導線が自然に配置されているか
22. まとめ
ISとFSの線引きは、少人数の営業組織を回す生命線です。役割を決め、SLAとログ、審査日管理、内製化ロードマップを整えるだけで、面談数も商談化率も上がります。関西・近畿の現場で学んだのは、週次の学びと90日ごとの見直しが効くということ。今日も院内のカフェで5分だけ振り返ります。「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」。答えが一つでもあれば、次の一歩は軽くなります。
また病院へ。
追加リソース
インサイド/フィールド分担のプレイブックやSLA例、伴走型支援の進め方はLPにまとめています。詳細は詳しくはこちらをご覧ください。
大きな成長市場です。
ただし、独力での突破には
限界があります。
ご相談ください
私たちは、医療・ヘルスケア業界で
よい商品・サービスを
必要とする現場に
確実に届けるためのパートナーです。