医療機器メーカーで営業部長を務め、今は支援会社のパートナーとして大阪・関西・近畿の病院や一般企業を回っています。病院・医療・ヘルスケアの営業は、商談が長期化しやすく、関与者も多い。数値で追わないとすぐ迷子になりますが、KPIが多すぎると現場が動かない。私は上司から「数字で語れ」と言われつつ、現場からは「数字だけでは動けない」と返され、板挟みになった経験があります。その狭間で、代行会社・コンサル・インサイド・フィールドセールスと一緒に試行錯誤した「少数精鋭KPI」と「週次の微修正」のやり方をまとめます。支援会社として伴走する立場からも、事業開発・販路開拓の方がすぐ使えるよう具体的に書きました。
1. KPIは4〜6個に絞る(最初の30日)
- 量と質の両輪:リード数、接触数、商談化率、PoC合意数、稟議通過率、回収期間。この6つで十分。病院では稟議と回収期間が命。一般BtoBでは商談化率と回収期間を太字に。
- 役割別に持ち場を明確化:代行会社はリード数と接触数、インサイドは商談化率、FSはPoC合意数と稟議通過率、コンサルは回収期間短縮の設計。支援会社は全体をつなぎ、バランスが崩れたら調整役に徹する。
- 大阪・関西・近畿の移動事情をKPIに反映:1日2〜3件訪問で移動1時間以内を目安に。移動時間をカレンダーで見える化すると、面談数と商談化率が安定する。
- 病院固有のKPI:審査日キャッチ率(倫理・情報・購買・役員会)、働き方KPI(時間外削減、夜勤負荷減、問い合わせ件数)。これを初回ヒアリングで押さえ、後工程で迷わないようにする。
2. 目標設定は「結果・手前・習慣」の3層で
- 結果KPI:PoC合意数、稟議通過率、回収期間。四半期で追う。
- 手前KPI:商談化率、提案数、合意形成の会議数(合同デモ、PoC設計会、中間報告)。週次で追う。
- 習慣KPI:面談後24時間以内の議事録送付率、キーマン特定率、審査日記入率。日次で追う。習慣が乱れると手前・結果が崩れるので、最初に整える。
- 数字と物語をセットに:関西の院内カフェで5分振り返り、「誰の時間を何分減らしたか」を一行で残す。数字だけのKPIより現場が動きやすい。
3. ダッシュボード設計のポイント
- ステージ順に並べる:リード→接触→商談→PoC→稟議→回収まで一列にし、赤黄緑の3色で詰まりを示す。
- 地域別の切り口:大阪・京都・神戸・奈良で分けると、移動効率と商習慣の違いが見える。大阪は意思決定が速いが慎重、京都は根回し重視、神戸は安全性重視、といった肌感を数値と紐づける。
- 病院と一般BtoBを分ける:病院は審査日と働き方KPI、一般BtoBは投資計画と決算期を表示。
- 責任分界を明確に:各KPIに担当を明記。「誰の数字か」が曖昧だと、打ち手が決まらない。
- 毎週更新、毎月棚卸し:週次は詰まりを一つだけ選び対策を決める。月次はKPI自体の見直し(削る・足す)を行い、数を増やしすぎない。
4. 週次の改善サイクル(60分で終わらせる)
- 数字を見る(10分):リード→接触→商談→PoC→稟議の順で遷移率を確認。病院案件と一般BtoBを色分け。
- 課題を一つ決める(10分):例「商談化率が20%→15%に低下」「稟議差し戻しが増加」「回収期間が18か月に伸びた」。
- 原因を絞る(20分):スクリプトの穴、キーマン未特定、審査資料の不足、働き方KPIの弱さ、移動効率の悪化など。
- 打ち手を決める(15分):スクリプト修正、チェックリスト追記、合同デモの日程確保、価格帯の再設定、データフロー図の差し込み。
- オーナーと期限を宣言(5分):支援会社・代行会社・コンサル・自社メンバーで担当を決め、翌週のレビュー項目に入れる。
5. 日次オペレーションの基本
- 朝の5分:カレンダーと移動を最適化し、病院・医療・ヘルスケアの訪問は会議体の時間(看護部朝礼、情報部MTG)を避ける。一般BtoBは決裁者の在席時間を確認。
- 訪問/商談:ヒアリングでは審査日、キーマン、働き方KPI、データフロー、責任分界を押さえる。録音禁止なら、メモ+その場の確認で漏れを防ぐ。
- 当日フォロー:資料送付は24時間以内。課題・効果・次回アクションを3行にまとめ、関西らしく「いつまでに何をするか」をはっきり伝える。
- 夕方の5分:ダッシュボードに数字を入れ、一行日記で感触を残す。「今日は看護部の時間外が刺さった」「大阪の製造業は経営陣が早かった」など、温度感をメモ。
6. KPIごとの具体的な打ち手
- リード数が足りない:学会・展示会の出展計画を前倒し、ホワイトペーパーを医療/ヘルスケア/一般で3種類作る。大阪・関西・近畿の病院協議会や商工会議所のイベントを活用。代行会社のリスト精度を週次で見直し。
- 接触率が低い:メールタイトルと時間をABテスト。大阪・京都・神戸で反応時間が違うので、地域別に送信時間を変える。
- 商談化率が下がる:スクリプトを見直し、初回で審査日・キーマン・働き方KPIを必須質問に。FS同席率を上げ、支援会社が同席してログを取り、QAに反映。
- PoC合意率が低い:評価指標を3〜5個に絞り、撤退条件と費用負担を明記。病院向けは安全性と労務、一般BtoBは回収期間とTCOを前に出す。
- 稟議通過率が落ちる:データフロー図、責任分界、回収期間、代替案比較を1枚で揃える。看護部・情報部・経営企画の懸念を別紙で解く。
- 回収期間が伸びる:価格モデルを見直し、段階導入や成果連動を提案。代行会社や支援会社の稼働を一部レベニューシェアにすることで初期費用を抑え、院内の負担感を下げる。
7. 病院・医療・ヘルスケア特有のKPI運用
- 審査日キャッチ率:倫理・情報・購買・役員会の予定を初回で聞き、カレンダー化。逃すと3か月遅れる。
- 働き方KPIの前倒し:時間外削減、夜勤負荷、転記ミス、問い合わせ件数を「現状→PoC→本導入」で示す。看護部と情報部で刺さる指標が違うので両方を入れる。
- データとセキュリティの透明化:アクセス権、ログ、更新手順、責任分界を資料に入れ、質問を先取りする。
- オンボーディングのKPI:初回教育完了率、問い合わせ初動時間、デモ機滞留日数。ここが高いと稟議後の離脱が減る。
- 地域特性:関西・近畿の再編情報(統合、新棟開設、体制変更)を月次で共有。計画が動くタイミングに合わせて提案すると、稟議が通りやすい。
8. 一般BtoB向けの調整ポイント
- 投資計画と決算期:決算前は稟議が重い。決算後のタイミングで短期ROIを示すと決まりやすい。
- 決裁者の立ち位置:購買・IT・現場・経営で評価軸が異なる。資料は1セットで4枚構成にし、立ち位置別の懸念を1枚ずつ用意。
- 回収期間の見せ方:月次キャッシュフローと人件費削減を並べ、12か月以内で戻る形を作る。
- インサイド/フィールドの役割分担:インサイドが課題と導入動機を押さえ、フィールドは懸念潰しと合意形成に集中。ここを曖昧にするとKPIがブレる。
9. 関西・近畿で機能したトラッキングの工夫
- 移動時間の見える化:Googleカレンダーに移動も予定化し、週次で「移動に何時間使ったか」を出す。1時間削ると面談が1件増える。
- タグ管理:リードに「病院/医療/ヘルスケア/一般」「大阪/京都/兵庫/奈良」「支援会社/代行会社/コンサル同席」などタグを付け、分析を早くする。
- 短文ログ:訪問後に「誰の時間を何分減らせそうか」を1行で残すと、提案の角度が揃う。
- デイリースタンドアップ:朝5分の更新で、代行会社・インサイド・FS・支援会社が同じ情報を握る。
10. ケーススタディ(3つ)
ケース1:大学病院向けAIドキュメント提案
リードは学会展示と紹介。商談化率が低下したのでスクリプトを刷新し、審査日と働き方KPIを必須質問に。PoC指標を「申し送り時間」「問い合わせ件数」「誤生成率」に絞り、回収期間を11か月で提示。稟議通過率が68%→82%に改善。
ケース2:大阪の製造業向けSaaS
接触率が下がったため、送信時間を朝7時と夕18時に分け、大阪・京都・神戸でABテスト。商談化率が15%→24%に回復。インサイドとFSの役割を明確にし、PoC合意率も1.3倍。
ケース3:在宅医療機器の販路拡大
代行会社がリード数を増やしたが回収期間が長い。価格を3段階にし、成果連動比率を上げたところ、稟議通過が早まり回収期間が18か月→12か月に短縮。
11. 失敗から得た教訓
- KPIを増やしすぎる:10個を超えると誰も覚えない。削る勇気を持つ。
- 役割不明で責任がぼやける:KPIに担当名を書き、週次で口に出す。
- 数字だけを追って現場が疲弊:一行日記で小さな達成を共有。
- 病院と一般を同じテンプレで扱う:審査日・働き方KPIを入れないと病院は止まる。
- 地域差を軽視:関西・近畿の再編や時間外削減目標を無視すると、温度が上がらない。
12. チェックリスト(抜粋20項目)
- KPIは4〜6個に絞ったか
- 結果・手前・習慣に分けて設定したか
- 役割(支援会社/代行会社/コンサル/IS/FS)を明記したか
- 移動時間をカレンダーに入れたか
- 病院の審査日を初回で押さえたか
- 働き方KPI(時間外/夜勤負荷/問い合わせ件数)を測る準備があるか
- 資料にデータフロー・責任分界を入れたか
- 稟議用の回収期間と代替案比較を用意したか
- メールABテストの結果を週次で見たか
- スクリプトを週1で更新したか
- ログ提出率を追っているか
- 学会・展示会の計画を前倒ししたか
- ホワイトペーパーを3業界向けに作り分けたか
- PoC評価指標を3〜5個に絞ったか
- 失注・差し戻し理由を分類したか
- 外部パートナーとのSLA遵守率を確認したか
- 朝5分・夕5分の習慣を続けているか
- 関西・近畿の再編情報を月次で共有したか
- 小さな成功を一行日記で共有したか
- 本文に自然な導線で「詳しくはこちら」を置いたか
13. よくある質問(Q&A)
Q:KPIを変えるタイミングはいつが良いですか?
A:月次レビューで「動かない数字」「意味の重複」を削り、新しい仮説が出たときに一つだけ追加します。毎週変えるのはNG。
Q:代行会社・支援会社とのKPI共有はどうしていますか?
A:週次の15分でダッシュボードを画面共有し、遷移率と詰まりを一つだけ決めます。SLAを固くしすぎると疲れるので、改善案をセットに。
Q:病院の稟議が長く、数字が動きません
A:審査日と働き方KPIを必ず初回で聞き、回収期間を12か月以内に設計します。情報部・看護部・経営企画それぞれに刺さる1枚を用意すると通過が早くなります。
14. 内部リンクと導線
- 課題記事→解決記事→LPの流れで本文中に「詳しくはこちら」を自然に配置。病院・医療・ヘルスケア向けのチェックリストをLPで配布しています。
- サイドバーや固定バナーで「医療業界特化 伴走型営業支援サービス」を案内し、支援会社としての役割を明確に。
- 提案の最後は「誰の時間をどれだけ減らすか」で締め、LPへのクリック理由を作る。
15. 継続運用のコツ(文化づくり)
- 数字を責めず、原因を探す:遷移率が落ちても叱責より前提の確認。「キーマン情報は取れているか」「移動が詰まりすぎていないか」を会話でほぐすと回復が早い。
- 関西らしい一体感:朝の5分で「昨日の小さな良かったこと」を一人一つ。大阪・関西・近畿のチームは雑談が潤滑油になる。
- 可視化をシンプルに:ダッシュボードは一画面で完結。関係者が多い病院案件でも「今どこに詰まっているか」が一目で分かれば、支援会社も代行会社も動きやすい。
- スクリプトと資料を週次で更新:現場の言葉が変われば商談化率も変わる。生成AIで初稿を作り、現場の声で仕上げるとスピードが落ちない。
- 小さな祝杯を挟む:回収期間が短縮した、審査日を逃さず通過した、そんな日に近所の喫茶店で5分のコーヒー。営業・事業開発・販路開拓の長距離走でも、気持ちが持つ。
16. まとめ
KPIは少数に絞り、日次・週次の小さな改善で回すと、病院営業でも一般BtoBでも迷わず進めます。大阪・関西・近畿を動き回る中で痛感したのは、数字だけでなく「誰の時間を減らせたか」という実感を残すこと。支援会社・代行会社・コンサルと役割を決め、移動も含めて可視化すれば、商談化率も稟議通過率もゆっくり上がります。雨の日の院内カフェでも、短文のログとKPIの色分けがあれば迷いません。今日も5分だけ振り返り、「詳しくはこちら」でLPに読者を誘導しながら、次の一歩を整えます。次週のレビューで数字と感触を揃え、また走ります。
追加リソース
KPIテンプレート、朝夕の5分レビューシート、病院向け稟議セットのサンプルをLPにまとめました。詳細は詳しくはこちらをどうぞ。
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