代理店任せの営業で頭打ちになり、ブランド毀損やクレームも経験しました。代理店を選び直し、契約と運用を整えたことで、広域のカバレッジと品質を両立できました。ここでは、医療・ヘルスケア領域で代理店を選定し、交渉し、育成するための実務ポイントをまとめます。2024〜2025年のトレンド(ガバナンス強化、医療DX、病院再編、働き方改革)を踏まえています。
1. 選定前に決めること
- 役割分担:アウトリーチだけ任せるのか、技術説明やPoCも含むのか。自社と代理店の境界を明文化します。
- 対象エリアと診療科:どのエリアを代理店に任せ、重点診療科をどこまで理解してもらうかを決めます。
- 評価基準:売上だけでなく、コンプライアンス遵守、報告品質、デモ機管理、クレーム件数を指標に入れます。
- 禁止事項と必須事項:再委託禁止、データアクセス範囲、反社・利益相反、贈答禁止を明記します。
2. 書類で確認するチェックポイント
- 医療/ヘルスケアの実績(病院・診療科・規模)。
- 財務状況(直近決算、負債、キャッシュフロー)。
- コンプライアンス体制(反社チェック、内部統制、情報セキュリティポリシー)。
- 営業体制(担当者数、専任の有無、技術サポート人員)。
- デモ機・資料の管理体制。
- 報告フローと頻度の実績。
- 主な顧客からのリファレンス。
- 地域医療構想や病院再編への理解度。
- 働き方改革への配慮(訪問時間、短時間商談の設計)。
- 生成AIやクラウド案件への対応経験(データフロー、ログ、責任分界の説明力)。
3. 契約で押さえるSLAと条項
- 応答時間:問い合わせから一次回答までの時間。
- デモ機管理:貸出・回収・清掃・保守のルール。
- 報告頻度とフォーマット:週次/月次のレポート項目(案件ステージ、リスク、次アクション、必要資料)。
- 再委託禁止とデータアクセス範囲:個人情報・医療データへのアクセスを制限し、再委託を禁止。
- インシデント対応:24時間以内の一次報告、72時間以内の再発防止策提出。
- 反社・利益相反:違反時の即時解除条項。
- 教育・研修:年○回の共同研修を契約に盛り込む。
- 成果連動:コンプライアンス遵守を前提に、成果に応じたインセンティブとペナルティ。
4. 交渉の進め方
- 目的を共有する:「売上」だけでなく「院内での信頼を毀損しないこと」を最優先項目として伝えます。
- 条件を段階的に詰める:価格やマージンより先に、役割分担とSLA、コンプライアンス条項を確定。その後で条件交渉に入ります。
- 成功事例と失敗事例を共有する:自社の失敗談も開示し、期待する行動を具体化します。
- 評価・表彰・改善の仕組みを提案する:月次レビューと年次評価を設け、表彰とペナルティをセットで合意します。
- 三者面談を設定:重要案件では病院担当者を交えた三者面談を行い、情報部や看護部の懸念を直接聞いてもらいます。
5. 立ち上げ後のオンボーディング
- キットの提供:データフロー、ログ、責任分界、PoC計画、FAQ、トークスクリプトをまとめたキットを渡します。
- ロールプレイ:看護部・情報部向けの説明をロールプレイし、フィードバック。
- 同行:月1〜2回は同行し、現場でのトークと振る舞いを揃えます。
- 週次ミーティング:10〜15分で案件ステージ、リスク、宿題を共有。
- デモ機管理の訓練:搬送・設置・回収・清掃の手順を実地で確認し、チェックリスト化。
6. 2024〜2025のトレンドに沿ったポイント
- 病院再編と地域医療構想:グループ横展開を想定した標準プロトコルと教育キットを共有し、「今年やる理由」を中期計画と結びつけます。
- 医療DX・生成AI:監査ログ、根拠提示UI、モデル更新審査の説明を代理店でもできるように教育します。
- 働き方改革:短時間商談の設計、時間外を避けた訪問、教育のオンデマンド化を徹底します。
- コスト圧力:TCOを分解した提案と、セルフメンテ・リモートサポートの説明を標準化します。
- ガバナンス強化:反社・利益相反チェック、再委託禁止、改訂履歴管理を徹底します。
7. ケーススタディ:再選定で品質を立て直した例
背景
旧代理店が院内ルールを守らず、クレームが頻発。訪問数は多いが受注が伸びず、ブランド毀損が懸念されました。
打ち手
- 新しい代理店を選定し、SLAと再委託禁止、データアクセス範囲を厳格に契約。
- 共同研修を実施し、デモ機管理と情報セキュリティ説明を標準化。
- 週次報告と月次同行をルール化し、トークと資料を毎月レビュー。
- 成果連動のインセンティブと、違反時のペナルティを明記。
結果
3か月でクレームゼロ、受注は前年同月比で20%増。院内からの問い合わせが代理店経由でスムーズに共有され、案件の進みも速くなりました。
8. チェックリスト(抜粋15項目)
- 医療実績(病院・診療科・規模)を確認したか
- 財務と反社チェックを済ませたか
- 役割分担とSLA(応答、報告、デモ機管理、再委託禁止)を文書化したか
- データアクセス範囲と個人情報の扱いを明記したか
- 教育キット(データフロー、ログ、責任分界、PoC計画、FAQ)を渡したか
- 週次報告と月次同行のスケジュールを決めたか
- インシデント報告のSLAを設定したか
- 成果連動の表彰・ペナルティを合意したか
- グループ病院への横展開プロトコルを共有したか
- 代理店向け失注・差し戻しレポートを共有したか
- 競合他社との比較ポイント(運用負荷、教育工数、TCO)を説明できるか
- デモ機の搬送・設置・清掃手順をチェックリスト化したか
- 訪問時間・所要時間を短く設計し、働き方改革に配慮したか
- KOLや院内チャンピオンとの接点を代理店にも共有したか
- 「誰の時間をどれだけ減らせるか」を代理店が説明できるようにしたか
9. よくある質問(Q&A)
Q:マージン交渉はいつ行うべきですか?
A:役割分担、SLA、コンプライアンス条項を固めた後に行うと、価格だけで揺れません。
Q:代理店が情報部や看護部の質問に答えられない場合は?
A:キットを更新し、共同研修でロールプレイを実施します。重要案件は三者面談で自社が回答をサポートします。
Q:クレームが出たときの対応は?
A:24時間以内に一次報告、原因と再発防止策を72時間以内に提出。必要に応じて同行して謝罪し、改善策を共有します。
Q:代理店を切り替えるタイミングは?
A:重大なコンプライアンス違反、SLA違反が続く、改善意思が見えない場合は切り替えを検討します。新規代理店のリストを常に更新しておきます。
10. 日々のルーティン
- 週次で代理店報告を確認し、リスクと宿題を明確にする。
- 月次で同行し、現場での説明と振る舞いをフィードバック。
- 失注・差し戻しを共有し、キットとトークを改訂。
- 病院のカフェで5分、「代理店を通じて誰の時間を減らせたか」を自問。
- 中期計画や病院再編のニュースを月1で共有し、提案に反映。
11. まとめ
代理店は「任せる相手」ではなく「一緒に走るチーム」でした。役割を明確にし、SLAとコンプライアンスを先に固め、教育とレビューを繰り返す。価格交渉より前に信頼の土台を作ることで、広いエリアを高い品質でカバーできました。今日も院内のカフェで5分だけ振り返ります。「誰の時間を減らせたか」「どの懸念を潰せたか」。答えが一つでもあれば、次の交渉もきっと前進します。
また病院へ。
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